MENU

江戸の粋を、逆さ読みの店名に込めて。下北沢のカルチャー人が中目黒に開いた古民家酒場「のゐの」

街の店舗分析|こだわり食材編

江戸の粋を、逆さ読みの店名に込めて。下北沢のカルチャー人が中目黒に開いた古民家酒場「のゐの」

東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」から歩いて5分ほど、区役所方面へと続く静かな路地の奥に、一軒の古民家を改装した小さな居酒屋がある。店名は「のゐの」、読みは「のいの」。1階は気軽に立ち寄れる立ち飲みスペース、2階は掘りごたつのある座敷という、昔ながらの大衆酒場の温もりを今に伝える造りだ。この店を手がけたのは、下北沢でライブ&カルチャースペース「CREAM」を5年間育ててきた海宝はるなさん。2026年4月、音楽の現場から一歩踏み出し、”食”と”酒場文化”という新しいフィールドに挑んだ一軒を、公開されている本人の言葉と中目黒の商圏データから読み解く。

中目黒駅徒歩5分
2026年4月1日グランドオープン
プロデュース 海宝はるなさん(下北沢CREAM)
古民家1F立ち飲み・2F座敷(掘りごたつ)
店名は「ONION」の逆さ読み
「街の店舗分析」とは

店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なる店舗紹介や格付けではなく、実在するお店を通じて「なぜこの場所で、この業態が支持されるのか」を考えます。

今回取り上げる「のゐの」は、開業からまだ半年に満たない新店です。飲食専門メディアによる本格的な取材記事はまだ見当たりませんが、開業前のクラウドファンディングを通じて、手がけた本人による開業の想いや店名の由来が、かなり詳細な言葉で公開されていました。音楽カルチャーの現場を歩んできた人が、なぜ古民家の居酒屋という新しい表現を選んだのか。その背景から、この店の魅力を紹介します。

先に結論:「のゐの」は、飲食業からの新規参入ではなく、音楽とカルチャーの現場で20年近いキャリアを積んできた人物が、初めて本格的に手がけた「食」の場です。下北沢のライブハウス店長を経て、2020年に「CREAM」という複合カルチャースペースをプロデュースした海宝はるなさんが、その5年間の経験を土台に「次の10年」を見据えて選んだのが、中目黒の一軒の古民家だった。派手さよりも「帰ってこられる場所」であることを重視したという開業の思想が、1階の立ち飲みと2階の座敷という気取らない空間設計、そして遊び心のある店名の由来にまで、一貫して表れている。

「のゐの」はどんなお店?

のゐのは、東京都目黒区上目黒2丁目24-3に位置し、東急東横線・東京メトロ日比谷線「中目黒駅」から徒歩5分(食べログ表記では駅から365m)の場所にある。駅の区役所方面へと歩き、一本路地に入った先に、古民家を改装した趣のある空間が広がっている。食べログの店舗情報によれば、オープン日は2026年4月1日で、席は1階がスタンディング(立ち飲み)、2階が掘りごたつのある座敷という2フロア構成だ。個室はなく、貸切には対応している。禁煙・喫煙は分煙で、駐車場はない。支払い方法はクレジットカードのみに対応しており、電子マネー・QRコード決済は不可となっている点は、昔ながらの大衆酒場らしい運営スタイルだと言えるだろう。

営業時間は、公式Instagramの表記では15:00〜22:00(L.O.21:00)、食べログでは15:00〜22:00(L.O.21:30)とされている。定休日は固定されておらず、食べログにも「休業日などインスタグラムを要確認」と注記されており、公式Instagramでも「2026.04.12(日)店休」のように、その都度の臨時休業が個別に告知される不定休スタイルが採られている。予算は食べログの口コミ集計で2,000〜2,999円程度と、日常的に通いやすい大衆酒場の価格帯に収まっている。ドリンクは日本酒・焼酎・ワインを揃え、料理は牛すじ塩煮込み(500円)、梅水晶(400円)、旨酢トマト(400円)、なめたけおろし(300円)、生ピーマン(300円)、漬物盛り合わせ(500円)、おすすめ3種盛り(1,000円)など、酒に寄り添う小皿が中心となっている。

店舗名
のゐの(読み:のいの)
所在地
東京都目黒区上目黒2-24-3
アクセス
中目黒駅から徒歩5分(約365m)
開業日
2026年4月1日(グランドオープン)
業態
古民家を改装した居酒屋(1F立ち飲み/2F掘りごたつ座敷)
営業時間
15:00〜22:00(L.O.21:00〜21:30、情報源により表記差あり)
定休日
不定休(公式Instagramで都度告知)
予算
2,000〜2,999円程度
プロデュース
海宝はるなさん(下北沢「CREAM」プロデューサー/株式会社fridge)
公式情報
店舗公式Instagram(@noino_nakame)
オリジナリティ①:下北沢で5年育てた「CREAM」から、”次の10年”のために選んだ古民家という場所

「のゐの」の背景を理解する上で欠かせないのが、手がけた海宝はるなさんのキャリアだ。公開情報を辿ると、2004年からライブハウスに勤務し、渋谷Glad Live Timeの店長、さらに渋谷「ロックのこころ」の店長を経て、2020年に下北沢一番街商店街でライブ&DJスペース「CREAM」をプロデュース。地下1階がDJフロア、1階がスタンディングバー、2階がバンド機材一式を揃えたライブフロアという3層構成の複合カルチャースペースとして、以来5年にわたって音楽とカルチャーが交差する場を作り続けてきた人物だ。その5年の節目に綴られたCAMPFIREのプロジェクト文には、次の一歩に踏み出した理由が率直に語られている。

「下北沢にCREAMという場所を立ち上げてから、気づけば5年が経ちました。(中略)確実に年齢を重ねていく中で、自分や一緒に働くスタッフ、友人達の10年後20年後の事を考えるようになりました。(中略)だからこそ、新しい『帰ってこられる場所』を作りたいと思いはじめました。」

――海宝はるなさん、CAMPFIRE「【中目黒×古民家 リノベ】『ただいま』と言える新しい大人の遊び場を!」プロジェクト本文より

音楽やクラブカルチャーの現場で夜を彩ってきた人が、なぜ「食」の領域である居酒屋を選んだのか。この問いに対しても、本人は同じ文章の中で明確に理由を述べている。

「なぜ居酒屋なのか?その理由はシンプルです。私自身、音楽やアートだけでなく、人が生きる上で欠かせない“食”の部分も、もっと掘り下げていきたいと思うようになりました。(中略)なにより、『居酒屋』は日本が誇る文化だと、私は思っています。」

――海宝はるなさん、同プロジェクト本文より

CREAMで培ってきた「音楽・カルチャー・クリエイターの融合」というテーマを手放すのではなく、その延長線上に”食”という新しい軸を加える。中目黒という、下北沢とはまた違う「洗練された空気の中に、どこか懐かしさの残る下町っぽさ」を持つ街との出会いが、この構想を後押ししたことも文中で語られている。

オリジナリティ②:「ONION」を逆から読んだ、CREAMの系譜を継ぐ店名

「のゐの」という、一見すると不思議な響きを持つ店名にも、本人の言葉による明確な由来がある。CAMPFIREの活動報告「新店舗の名前、決まりました!」によれば、この名前はCREAMの前身にあたる池尻の「sour」から続く、いわば命名の系譜の中から生まれたものだという。

「CREAMの前身とも言える池尻にあった『sour』、そして現在の『CREAM』。以前からもし新店舗を出すならONIONかなぁとよく話をしていました。(中略)そこから生まれたのが『のゐの』です。自分たちらしく遊び心を加えて、ONIONを逆から読んで和の響きを感じられる名前にしました。」

――海宝はるなさん、CAMPFIRE活動報告「新店舗の名前、決まりました!」より

「sour」から「CREAM」、そして構想段階にあった「ONION」を逆さに読んで生まれた「のゐの」。一貫して英単語の遊び心を軸にしながら、今回は和の響きへと転換させているところに、江戸の粋と現代カルチャーを掛け合わせるという店のコンセプトそのものが凝縮されている。単なる思いつきのネーミングではなく、これまで手がけてきた場所とのつながりを大切にした、いわばブランドの連続性を示す店名だと言えるだろう。

オリジナリティ③:赤提灯は無いけれど、赤提灯が似合う。古民家がもたらす隠れ家性

食べログの口コミには「駅から歩いて5分。一本路地に入ると、古民家を改装した趣のある空間が広がっています」「1階はサクッと飲める立ち飲み、2階に上がると座敷でゆっくり飲める。赤提灯は無いけど赤提灯が似合う、昔ながらの大衆酒場っぽい雰囲気」といった来店者の評が寄せられている。看板を大きく掲げるわけでもなく、路地の奥にひっそりと佇むその立地は、CAMPFIREの文章で語られた「喧騒から少し離れた静かな路地に佇む一軒の古民家」という表現とも符合する。

「隠れ家」であることが、そのまま口コミの起点になっている。
派手な宣伝や大きな看板に頼らず、路地の奥という控えめな立地と、古民家という素材そのものの温もりを活かした空間設計は、来店者に「見つけた」という体験を提供します。実際、食べログの口コミの多くが「ニューオープンの立ち飲み屋」「隠れ家感がある」といった発見的な言葉で綴られており、СREAMで培われてきた”人が自然と集まる場所づくり”の感覚が、そのまま酒場という業態にも引き継がれていることがうかがえます。

中目黒は「高所得単身×飲食激戦区」。大衆酒場としての”ちょうどよさ”が効く商圏

店舗立地研究所が整理した中目黒駅半径1km圏のデータでは、夜間人口58,360人に対し昼間人口78,968人、昼夜比1.35という「都心近接型の高感度商圏」であることが示されている。1人世帯比率は57.7%と過半を大きく上回り、高所得世帯比率(年収700万円以上)は41.2%、年収1,000万円以上の世帯も23.8%に達するなど、可処分所得に比較的余裕のある単身層が厚く集積している。一方で飲食店数は674店舗と、目黒区内でも突出した商業集積を形成しており、駅前・路面店を巡る競争は極めて激しい。中目黒駅周辺の店舗テナント賃料相場は坪単価平均36,517円(2026年、2023年比約16%上昇)とされ、路面の一等地はもとより希少な物件を巡る争いも熾烈だ。

こうした「高所得だが飲食店が飽和した商圏」において、のゐのが選んだ2,000〜2,999円という予算帯と、路地奥の古民家という立地は、実は理にかなった選択と言える。高単価・高感度な新店がひしめく中目黒にあって、”ちょっと1杯だけ”気軽に立ち寄れる大衆酒場という業態は、むしろ希少なポジションだ。単身世帯が多く、日常的に「近所で軽く飲みたい」という需要を抱える住民にとって、看板に頼らず口コミで見つけられる隠れ家的な立ち飲み屋は、他の高価格帯の新店とは異なる形で支持を広げやすい。

中目黒駅1km圏の指標 公開値 「のゐの」への読み替え
昼夜人口比 1.35(昼間流入型) 15:00という早い時間からの営業は、平日の”ちょい飲み”需要や休日の早い時間帯の来店を取り込みやすい設計です。
1人世帯比率 57.7%(都内有数の単身集積) 1人でもふらっと立ち寄れる1階の立ち飲みスペースは、単身層の多い商圏の需要と噛み合っています。
高所得世帯比率 41.2%(年収700万円以上) 高単価な新店が多いエリアで、2,000〜2,999円という手頃な価格帯は、日常使いの選択肢として際立ちます。
飲食店数 674店舗(激戦区) 看板を主張しない路地奥の立地でも、古民家という素材の個性と口コミによって「発見される」余地があります。
テナント賃料坪単価 36,517円(2026年・前年比上昇) 路面の一等地を避けた立地選びは、賃料負担を抑えつつ隠れ家性を高める一手にもなっています。

※中目黒駅の商圏データは、国勢調査・経済センサス等を基礎として店舗立地研究所が整理した半径1km圏の公開値です。統計項目により基準年が異なり、店舗の実際の来店客数や売上を示すものではありません。

店舗立地研究所が「気になる」と感じた3つのポイント
1.音楽カルチャーの現場感覚を、酒場づくりに応用する視点

ライブハウス・クラブの現場で培ってきた”人が自然と集まる場”の作り方が、業態を変えても一貫して活かされている点が興味深い挑戦です。

2.「sour」「CREAM」から続く、遊び心のある命名の系譜

ONIONの逆さ読みという店名の発想は、単なる思いつきではなく、これまで手がけてきた場所とのつながりを大切にしたブランディングの表れです。

3.高所得エリアであえての「大衆酒場価格」という選択

高単価な新店が集まる中目黒で、2,000円台という手頃な価格帯を貫く姿勢が、日常使いできる店としての独自ポジションを作っています。

【街の店舗分析まとめ】

「のゐの」は、飲食業からの新規参入ではなく、下北沢のライブ&カルチャースペース「CREAM」を5年間手がけてきた海宝はるなさんが、初めて本格的に取り組んだ”食”の場だ。派手さよりも「帰ってこられる場所」を重視したという開業の思想、CREAMの前身「sour」から続く命名の系譜を継ぐ「のゐの」という店名、そして1階の立ち飲みと2階の座敷という気取らない空間設計。そのどれもが、音楽カルチャーの現場で培われてきた”人が自然と集まる場づくり”の延長線上にある。高所得層が厚く飲食店が飽和した中目黒という商圏において、あえて2,000円台の大衆酒場という業態を選んだことも、看板に頼らず口コミで見つけられる隠れ家としての強さにつながっていると考えられる。

この記事は公開情報を基にした分析であり、海宝さんご本人から直接お話を伺えたわけではありません。「のゐの」という店で日々どのようなお客様との出会いがあるのか、CREAMでの経験が実際の接客や店づくりにどう活かされているのか、開業から半年を迎えるにあたっての手応えなど、公開情報だけでは分からないことが数多くあるはずです。もし取材の機会をいただけましたら、開業後の実際のお話について直接お伺いし、改めて記事としてお届けできればと思っております。

地域のお店を、商圏データと一緒に紹介します

店舗立地研究所では、飲食店、美容サロン、整体・リラクゼーション、パーソナルジム、専門小売店など、地域で営業する店舗の魅力を、立地・商圏・顧客層の視点から紹介しています。

掲載・取材をご希望の店舗様は、公式LINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。店舗の出店・移転・商圏分析、事業計画、資金調達、補助金活用、集客、省力化のご相談についても対応しております。

公式LINEで相談する
お問い合わせはこちら

出典・確認資料

執筆・分析:太田 満/編集:店舗立地研究所編集部

本記事は店舗の優劣や経営状態を格付けするものではありません。公開情報を用いて、地域店舗の魅力と立地・店舗経営上の可能性を独自に考察したものです。売上、利益、実際の顧客構成等を推定・保証するものではありません。営業時間・メニュー内容は変更されることがあるため、ご来店前に必ず公式Instagramや電話での最新情報をご確認ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

太田 満のアバター 太田 満 店舗立地研究所及び合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ代表

合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ 代表社員
店舗立地研究所 代表

株式会社みずほ銀行にて16年間、数百社の中小企業オーナー・個人事業主の渉外・融資審査・経営相談業務に従事。
2021年独立後は創業支援・店舗出店支援を多数手がける現役コンサルティング会社代表。

専門は店舗事業の商圏(エリア)分析。2,000以上のエリア分析を実施し、「負けない店舗経営」「失敗しないフランチャイズ選び」を支援中。

資格:中小企業診断士・宅地建物取引士・フランチャイズオーガナイザーのほか、賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・不動産証券化マスター・M&Aシニアエキスパートなどの資格も保有。

第19回(2026年4月30日締切)小規模事業者持続化補助金の申請者に対して、KLA(KDDI Location Analyzer)を用いた自社商圏分析サポートを実施。

その他、税理士事務所様などと共催の補助金セミナーなども行っており、店舗立地や補助金などのセミナー依頼も、公式LINEからお気軽にお問い合わせくださいませ。

コメント

コメントする