新横浜駅から徒歩5分。「新横浜食料品センター」で12年ぶりに実店舗を構えた横浜染めブランド「AMONG(アマング)」を立地と歴史から分析
神奈川県横浜市港北区篠原町2803-3、複合施設「新横浜食料品センター」1階。東急新横浜線・相鉄新横浜線・横浜市営ブルーライン「新横浜」駅出口2から徒歩5分、JR横浜線「新横浜」駅北口から徒歩8分の場所に、2026年7月3日、テキスタイルブランド「AMONG(アマング)」の初めての実店舗がオープンしました。2014年の創業以来、12年間にわたって百貨店やギャラリーでのポップアップショップを中心に活動してきたこのブランドが、なぜ今、実店舗という選択をしたのか。その背景と立地の意味を店舗立地研究所が分析します。
2014年ブランド設立・2026年7月実店舗オープン
横浜染め・手捺染のテキスタイル雑貨
個人店が集まる複合施設「新横浜食料品センター」内
公開情報による独自分析
店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なる店舗紹介や格付けではなく、実在するお店を通じて、「なぜこの場所で、このお店が支持されるのか」を考えます。
公開情報をもとにした分析では、確認できた事実と店舗立地研究所による考察・提案を区別して掲載します。店舗への取材が実現した場合は、オーナーの声や現地で確認した情報を加えた「リアル店舗レポート」として、さらに詳しくご紹介します。
先に結論:「AMONG(アマング)」の最大の特徴は、12年間「拠点を持たない旅する店」として活動を続けてきたブランドが、初めて「時間をかけて育てる場所」を得たという転換点そのものにあります。新横浜駅から徒歩5分という交通利便性の高い立地でありながら、駅前の賑わいとは反対側の静かな住宅街に店を構え、横浜の地場産業である「横浜染め・手捺染」という手仕事を軸にした商品づくりを続けてきた点は、大量生産・大量消費とは異なる価値観を持つ顧客層との相性の良さを感じさせます。入居先が個性的な個人店が集まる「新横浜食料品センター」であることも、単独出店とは異なる集客構造を持つ、この店ならではの強みだと言えるでしょう。
AMONG(アマング)は、神奈川県横浜市港北区篠原町2803-3にある複合施設「新横浜食料品センター」の1階(旧鮮魚店の区画)に店を構える、横浜染め・手捺染のテキスタイル雑貨ブランドです。運営するのは、デザイナーの中村寛子さんと金子桃子さんの2人。神奈川新聞(カナロコ)の紹介によれば、2014年春、以前同じレストランで働いていた2人がほぼ同時期に退職した数ヶ月後に再会し、「一緒に何かをしよう」と声をかけたことがブランドの出発点になったといいます。中村さんの地元である横浜が染めの産地であったことから染色工場を探し、生地づくりを始めたというのが、このブランドのものづくりの原点です。
2014年8月に、2人が出会ったレストランで最初のコレクション展示会を開催してから、以降12年間、新宿伊勢丹や銀座松屋をはじめとする全国の百貨店・ギャラリー・マーケットでの期間限定ポップアップショップを中心に活動を続けてきました。そして2026年4月30日にブランド設立12周年を迎えたのち、同年7月3日、初めての実店舗を新横浜食料品センターにオープンしています。公式サイトの特定商取引法に基づく表記によれば、代表者は中村寛子さんで、所在地は横浜市緑区中山とされています。長らく「拠点を持たない旅する店」として活動してきたブランドが、初めて定住の場所を得たという点は、この店舗を分析するうえでの最大のトピックだと言えます。
「本当に欲しいものはなんだろう?そこからAMONGのコンセプトができました。私たちが本当に欲しいものは、どんな時も心晴れやかに、健やかに暮らしていく力だと思います。」
――AMONG公式紹介文(iichi「作り手」ページ)より
- 店舗名
- AMONG(アマング)
- 所在地
- 神奈川県横浜市港北区篠原町2803-3 新横浜食料品センター 1階(1-5区画)
- 運営
- デザイナー2名(中村寛子さん・金子桃子さん)/現地運営は中村さんとパートナーの「しょーぺー」さんが中心
- ブランド設立
- 2014年(2026年4月30日で12周年)
- 実店舗開業
- 2026年7月3日
- 業態
- 横浜染め・手捺染テキスタイル雑貨店(ストール・スカーフ・バッグ・革小物・アパレル等)
- 主な販路
- 実店舗/公式オンラインショップ/全国百貨店等での期間限定ポップアップショップ
- 営業日・時間
- 木・金11:00〜18:00、土日祝11:00〜17:00、火・水休み(開業直後は曜日・時間帯が変動しており、最新情報は公式SNSでの確認を推奨)
- 代表者(特商法表記)
- 中村 寛子(所在地:横浜市緑区中山)
- 公式サイト
- among.jp
- 公式Instagram
- @among.japan
- 入居施設
- 新横浜食料品センター(snfc.jp)
AMONGの商品には、ユニークなネーミングと、購入者へのメッセージが記された「言葉カード」が添えられています。代表的な「桃栗三年柿八年」柄は、デザイナー2人が制作に行き詰まった際、「白黒つけることが正解じゃなくて、グレーな状態を小脇に抱えたまま、そのままで進んでいけばいい」と気づいたことから生まれたというエピソードがあり、単に「かわいい柄」ではなく、生活のヒントそのものが商品化されている点が独自性の核になっています。
横浜は開港以来120年以上の歴史を持つハンカチ・スカーフの産地で、AMONGはこの地の捺染工場で「手捺染」という、一色ごとに型をのせて色糊を摺り込む手作業の染色を行っています。工場数が減少する中でこの製法にこだわり続けている点は、単なる雑貨店ではなく、地域産業の担い手としての側面も持つブランドであることを示しています。
実店舗の内装は、パートナーの「しょーぺー」さんを中心に家族総出でDIYで仕上げられ、しょーぺーさんの祖父の家から譜取った古い窓ガラスを使った建具など、思い入れのある素材が使われています。12年間、各地の催事場を渡り歩いてきた経験があるからこそ、「完璧を待たずに始める」という身軽さと胆力を持って、初めての実店舗づくりに向き合えたと考えられます。
AMONGが店を構える新横浜食料品センターは、新横浜駅から徒歩5〜8分という交通利便性の高さを持ちながら、駅前の賑わいとは反対側にある閑静な住宅街の中に位置しています。新横浜駅は東海道新幹線の停車駅であり、東急新横浜線・相鉄新横浜線の開業(2023年3月)以降、乗降人員が大きく伸びているエリアです。東急電鉄の公表資料によれば、2024年度の新横浜駅(東急新横浜線)の1日平均乗降人員は87,976人で、前年度比23.1%増という高い伸びを記録しており、新横浜エリア全体の交通結節点としての重要性が増していることがうかがえます。一方、JR横浜線の新横浜駅は2023年度の1日平均乗車人員が47,580人(前年度比7.5%減)となっており、路線間で利用動向に違いが見られる点も、このエリアの過渡期的な性格を示しています。
| 新横浜エリアの特性 | 公開情報 | AMONGへの読み替え |
|---|---|---|
| 新横浜駅(東急新横浜線)の乗降人員 | 1日平均87,976人・前年度比+23.1%(東急電鉄2024年度) | 新横浜線開業後、駅としての存在感・利用者数が急速に拡大中。 |
| 新横浜駅(JR横浜線)の乗車人員 | 1日平均47,580人・前年度比△7.5%(JR東日本2023年度) | 路線間で利用動向に差があり、駅全体としては過渡期にある。 |
| 入居施設の立地 | 駅前の商業集積エリアとは反対側の閑静な住宅街(新横浜食料品センター) | 通行量に依存せず、施設自体の目的地性で集客する構造。 |
| 施設の成り立ち | 老朽化した食料品店を建て替え・改修し、個人店が集まる複合施設として再生 | 単独出店ではなく、施設全体のブランド力を土台にした出店。 |
※駅別数値は東急電鉄・JR東日本の公表資料を基礎として整理したものです。統計項目により調査時点・調査方法・路線区分が異なり、店舗の実際の来店客数や売上を示すものではありません。
AMONGの立地を語る上で欠かせないのが、入居先である「新横浜食料品センター」という施設そのものの特殊性です。この施設は、建築設計事務所ウミネコアーキの若林拓哉氏が企画・設計・運営までを一貫して手がけるプロジェクトで、もともと若林家が代々地主として所有していた土地にあった食料品店を、老朽化対応として一部建て替え・一部耐震改修する形で再構成したものです。「近隣にはスーパーやコンビニしかなく、個人の商店がない」という地域課題に対し、「地域のダイニングキッチン」をコンセプトに、カフェバー、パン屋(Proof Bakery)、青果店、コモンキッチン、民間図書館など、個性豊かな個人店が集まる場所として設計されています。
この施設のもう一つの特色は、テナント同士の距離の近さと日常的な交流です。月に一度、若林氏を交えたテナント間の定例ミーティングが開かれ、清掃分担や困りごとの相談に加え、賞味期限の近い商品を分け合うといった協力関係が築かれているといいます。AMONGにとっても、単独で商圏を切り拓くのではなく、施設全体のブランド力や「はしごして回る」常連客の存在を土台にした出店であることは、初めての実店舗展開における一つの安心材料になっていると見ることができます。
AMONGにとって今回の実店舗開業は、単なる新規出店ではなく「12年間続けてきたポップアップ中心の活動から、次の段階へ移る」という大きな転換点でもあります。公式ブログによると、2026年3月に偶然ウェブサイトでこの物件情報を見つけ、4月上旬の申込みから10日ほどでオファーを受けたという経緯が語られています。その後は5月19日に横浜へ転居、20日に施設への入居手続きを完了させるなど、非常に短期間で環境を整えていった様子がうかがえます。
内装工事は当初から「DIYで作り上げる」という方針が掲げられ、パートナーの「しょーぺー」さんが設計・施工の中心を担い、しょーぺーさんの父親も手伝いながら古い窓ガラスを使った建具を加工するなど、家族総出でのものづくりが行われました。壁の漆喰塗りも中村さん自身が手掛け、「プロのように美しくはできないけれど、この場所にたくさんの『楽しい』が積み重なるように」との思いを込めて仕上げたと綴られています。オープン日については、横浜の友人からの提案で「大安(縁起の良い日)」を調べ、7月の最初の大安である7月3日に決定したという、飾らないエピソードも印象的です。
ここからは、店舗の現在の顧客構成や実施状況を確認したものではなく、公開情報とブランドの活動傾向、エリア特性から考えられる今後の可能性です。すでに実施されている取組が含まれる可能性があります。
東急新横浜線・相鉄新横浜線の開業以降、新横浜駅の乗降人員は前年度比23.1%増という高い伸びを記録しています。これは沿線人口が直接ペット飼育需要のように単純にテキスタイル需要と結びつくものではありませんが、駅の利用者数が増えている局面にあることは、通りすがりや乗り換えの合間に立ち寄る新規顧客層との接点が広がる可能性を示唆しています。
12年間のポップアップ展開で獲得してきた顧客層は、主に百貨店催事に足を運ぶ層です。この既存顧客に対して、実店舗開業を丁寧に告知し、新横浜という立地に足を運んでもらう動機づけ(限定商品の発表や、来店特典の設計など)を行うことで、これまでの顧客基盤を新しい拠点へつなげていける可能性があります。
この施設自体が、パン屋やカフェバーなど個性的な個人店の集積による「目的地型」の集客構造を持っています。施設全体を目当てに訪れる来訪者が、AMONGの店にも自然に立ち寄る流れをより強化できれば、単独では得づらい新規接点を継続的に獲得できる可能性があります。
拠点を持たずに12年間活動を続けてきたブランドが、ようやく実店舗を構えたという経緯は、数多い雑貨店の中でも際立ったストーリー性を持っています。DIYでの内装づくりや、大安を選んだオープン日決定の過程など、公式ブログで綴られているエピソードを、初めて店を訪れる人にも伝わる形でより前面に出していくことで、単なる「新しくできた雑貨店」ではない、ブランドの深みをより多くの人に伝えられると考えられます。
横浜染め・手捺染という製法の背景は、これまで百貨店催事という短期的な接点では伝えにくい部分もあったと考えられます。実店舗という常設の場を得たことで、製法や職人の手仕事を紹介する展示やワークショップなど、時間をかけたコンテンツを展開できる可能性が広がっています。
12年間ポップアップショップ中心で活動してきたブランドが、初めて実店舗を構えるというフェーズには、開業直後の店舗特有の経営上の検討点もあります。以下はAMONGが現在必要としている、または各制度を利用できると判断したものではありません。同様の業態を営む店主にとっての一般的な選択肢です。
開業直後の公式ブログでは「平日・土曜11:00〜19:00、日祝11:00〜18:00、火・水休み(変動あり)」という案内がされていた一方、その後の公式サイトでは「木・金11:00〜18:00、土日祝11:00〜17:00、火・水休み」といった異なる時間帯の記載も確認されています。実店舗としての営業リズムが定着していく過渡期にあると見られ、月次カレンダーでの案内と合わせて、複数の媒体間で情報を統一していくことが、来店者の混乱を防ぐうえで検討できるポイントです。
これまで百貨店催事に足を運んでいた顧客層と、実店舗を構えた新横浜という立地で新たに獲得しうる顧客層(地域住民、施設目当ての来訪者、駅利用者など)は、必ずしも重なるとは限りません。両者それぞれに合わせた発信や来店動機づけを設計していくことが、実店舗運営を安定させていくうえでの一つの検討課題だと考えられます。
これまで言葉カードや柄のストーリーで伝えてきたブランドの世界観を、実店舗という常設の場で「体験」として提供できる可能性があります。染色体験やワークショップなど、実店舗ならではのコンテンツを段階的に増やしていくことは、ポップアップ時代にはできなかった新しい価値提供につながると考えられます。
補助金は、採択や交付決定が約束されるものではなく、申請前に契約・発注・支払いをすると対象外になる制度もあります。まず事業の課題と必要な投資を整理し、その後に対象制度、公募期間、補助対象経費を確認する順番が重要です。2026年8月時点では、小規模事業者の販路開拓等を支援する小規模事業者持続化補助金(創業型を含む)、横浜市が実施する小規模事業者店舗改修助成事業などがあります。募集期間、予算残額、対象経費などは変わるため、必ず申請時点の公式情報を確認する必要があります。
AMONG(アマング)の強さは、駅前の賑わいや大量生産にはない、横浜染め・手捺染という手仕事へのこだわりと、12年間かけて積み重ねてきたブランドのストーリー性そのものにあります。新横浜駅という交通利便性の高い場所にありながら、静かな住宅街に位置する「新横浜食料品センター」という個性的な複合施設に入居したことは、単独出店とは異なる集客の後押しを得られる選択だったと考えられます。拠点を持たずに旅を続けてきたブランドが、初めて「時間をかけて育てる場所」を得て、これからどのような物語を積み重ねていくのか。開業して間もないこの店の今後の展開は、注目に値するテーマだと言えるでしょう。
店舗立地研究所では、飲食店、物販店、雑貨・テキスタイルブランド、美容サロン、パーソナルジムなど、地域で営業する店舗の魅力を、立地・商圏・顧客層の視点から紹介しています。
掲載・取材をご希望の店舗様は、公式LINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。店舗の出店・移転・商圏分析、事業計画、資金調達、補助金活用、集客、省力化のご相談についても対応しております。
- 公式サイト「AMONG」トップページ・ABOUTページ(ブランドコンセプト、ものづくりの背景)
- 公式サイト「特定商取引に基づく表示」ページ(代表者名、所在地情報)
- 公式ブログ「Building a Base in Our 12th Year」(2026年5月)(物件との出会い、転居・入居の経緯)
- 公式ブログ「Ride the wave! Opening Friday, July 3rd!」(2026年7月)(オープン日決定の経緯)
- 公式ブログ「From the night before opening to the first day」(2026年7月)(開業前後の内装・営業時間案内)
- 公式サイト「桃栗三年柿八年」コレクションページ(代表柄のデザインエピソード)
- 神奈川新聞(カナロコ)「横浜捺染工法で商品化 伝統と斬新さ融合」(創業の経緯、デザイナー2名の実名・年齢)
- iichi「自然をモチーフにした横浜染め」紹介記事(ブランドコンセプト、横浜染めの歴史)
- 新横浜食料品センター公式サイト(snfc.jp)(施設概要、アクセス情報)
- getnews「新横浜駅徒歩10分の住宅街に、個人商店が集まる食の拠点がオープン」(施設の企画・設計背景、若林拓哉氏インタビュー)
- 新横浜新聞「<東急の乗降人員>新横浜駅が23%増の8.7万人超」(新横浜駅・東急新横浜線の乗降人員データ)
- 新横浜新聞「<JR東日本の乗車人員>新横浜・菊名・羽沢で減少」(JR横浜線新横浜駅の乗車人員データ)
- AMONG 公式Instagram(@among.japan)(日々の様子、ポップアップショップ情報の発信)


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