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本を売らなくてもいい書店。編集者が「まちの書店」を継いだ理由——白楽の「bookpond」は、なぜ書店なのに”書店(など)”と名乗るのか

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街の店舗分析|「まちの書店」の持続可能性を考える編

本を売らなくてもいい書店。編集者が「まちの書店」を継いだ理由——白楽の「bookpond」は、なぜ書店なのに”書店(など)”と名乗るのか

東急東横線・白楽駅東口から徒歩80歩。横浜市神奈川区の六角橋商店街にほど近い、学生と住民が共存する下町の一角に、2025年7月24日にオープンした「書店(など)」bookpond(ブックポンド)がある。店主の小池真幸さんは、人文書の企画・編集を手がけるフリーランス編集者。決して本屋で働いたことのない一人の編集者が、ある日突然、老朽化でも赤字でもなく「たまたま」移転を決めた行きつけのブックカフェの跡地を、自らの手で引き継ぐことを決めた。クラウドファンディングで開業資金を募り、noteで全27回にわたる「制作記」を綴りながら準備を進めたその過程には、「テキストを編むこと」と「場を編むこと」の間で揺れる、一人の編集者の思想的な葛藤が刻まれている。店舗立地研究所が、その正体を読み解く。

東急東横線 白楽駅東口 徒歩80歩
2025年7月24日オープン・書店(など)
書店+喫茶喫酒+イベント+コワーキング
店主 小池真幸氏・フリーランス編集者
前身「ブックカフェはるや」の跡地を継承

「街の店舗分析」とは

店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なる店舗紹介や格付けではなく、実在するお店を通じて「なぜこの場所で、この業態が支持されるのか」を考えます。

今回取り上げる「bookpond」は、全国的に減少が続く「まちの書店」というテーマに対して、一人の編集者が自らの職能を賭けて実験を試みている点が興味深く、選定しました。書店・カフェ・イベントスペース・コワーキングという複数の機能を持つ複合施設が、なぜ、どのようにして生まれたのか。本記事では、店主自身が公開しているnote連載やクラウドファンディングのページ、複数のインタビュー記事といった一次情報を基に、この店の独自性を掘り下げていきます。

先に結論:「bookpond」は、「書店」という業態そのものが抱える構造的な難しさに、編集者としての職能とクラウドファンディングという手法で正面から向き合った、稀有な事例です。店主の小池真幸さんは、行きつけだった「ブックカフェはるや」が長崎への移転を決めたことをきっかけに、その跡地を自ら引き継ぐことを決断。クラウドファンディングで開業資金を集めながら、書店・喫茶喫酒・イベントスペース・コワーキングスペースという4つの機能を一つの空間に編み込んだ。開店から1年を経て、当初は「自分のキュレーションを見せよう」という編集者的なエゴが強かった選書の方針は、「より多くの人に届けよう」という間口の広さを重視する方向へと変化している。この「深く刺す」から「間口を広げる」への転換の過程そのものが、この店の最大の物語であり、記事としての深みを支える核心だと言える。

なぜ「書店」ではなく「書店(など)」なのか——名前と店名に込められた設計思想

bookpondという店の性格は、その名乗り方一つに凝縮されている。公式のクラウドファンディングページでも、地域メディアの取材でも、小池さんは一貫して自分の店を「書店」ではなく「書店(など)」と呼ぶ。この「(など)」という括弧書きこそが、単なる本を売る場所ではないという宣言だ。店内は、新刊・古書を約2000冊取り揃える書店エリア、コーヒーやお酒を楽しめる喫茶・喫酒エリア、読書会やトークイベントが開催されるイベントスペース、そして日中は「まちの書斎」として使えるコワーキングスペースという、性格の異なる複数の機能が一つの空間に共存する構成になっている。

「bookpond」という店名自体にも、この多層的な設計思想が表れている。地域メディア「六角橋ナビ」のインタビューで小池さんが明かしたところによれば、名前の由来は「小池」の本屋でpond(=池)という言葉遊びであると同時に、「にぎやかな池が生態系を育むように、新しい試みが自然と生まれていく空間になっていってほしい」という願いが込められているという。書店という一つの静的な”箱”ではなく、様々な人の営みが行き交い、思いがけない出会いが生まれる”生態系”としての場を目指していることが、この命名の背景から見えてくる。

店舗名
書店(など)bookpond(ブックポンド)
所在地
横浜市神奈川区白楽103 松尾白楽第二ビル 2階
アクセス
東急東横線「白楽駅」東口から徒歩80歩
オープン
2025年7月24日本オープン(前身「ブックカフェはるや」は2024年12月に長崎へ移転)
店主
小池真幸氏(1993年生まれ。神奈川県川崎市麻生区出身。東京大学教育学部卒。フリーランス編集者)
業態
書店(人文書中心)+喫茶・喫酒+イベントスペース+コワーキングスペース(「まちの書斎」)
営業日・時間
週3〜4日程度(例:火・水17:00〜22:00、土・日14:00〜20:00など。季節・イベントにより変動)
開業資金
クラウドファンディング(CAMPFIRE、All-in方式)目標150万円達成、ネクストゴール250万円設定
空間デザイン
クリエイティブディレクション:守屋輝一氏(株式会社きいちのメモ)/空間設計:神永侑子氏ほか(AKINAI GARDEN STUDIO)
関連書籍
小池真幸『偏りながら、ひらきたい──書店(など)制作記』(bookpond、2026年8月刊)
SNS
Instagram:@bookpond_hakuraku/X:@bookpond_

すべての出発点は、日常に通っていた「ブックカフェはるや」の閉店

bookpondの物語を理解する上で欠かせないのが、前身となる「ブックカフェはるや」の存在だ。2022年に白楽で開店した「はるや」は、もともと80〜00年代のマガジンハウスで編集者・ライターとして活躍していた草野史さん・小檜山想さんが営んでいた店で、2010年代には武蔵小山で数席だけの酒場を営んでいたが、建物の老朽化を機に「次はブックカフェをやろう」と物件を探し、たまたま条件が合ったのが白楽だった、という経緯を持つ。

白楽に暮らしていた小池さんは、この「はるや」の常連客だった。クラウドファンディングページで小池さん自身が綴っているところによれば、本に囲まれる楽しさ、大きな窓からの眺めの素晴らしさ、そして店主二人の温かい人柄に惹かれ、「もはや書斎かのように」通い詰めていたという。ここ数年の自分の制作物の多くはこの店での作業によって生み出されたと明言するほど、小池さんにとって「はるや」は職業上の書斎以上の意味を持つ場所になっていた。ところが2024年12月、「はるや」は長崎への移転を決める。この時、小池さんの中で「白楽でこういう素敵な場がなくなるのは残念だ」という気持ちが、単なる寂しさを超えて、「自分が引き継げないか」という具体的な検討へと変わっていった。

「ご自身にとって居心地の良い場所だったのであれば、その良さをマネタイズしても良いんじゃないか。」

――松栄三代目・酒井洋輔氏が小池氏にかけた言葉(「ケの日のこのまち」インタビューより)

興味深いのは、この決断が最初から確固たるものではなかった、という点だ。「ケの日のこのまち」のインタビューで小池さんは、当初は「はるや」の物件をそのまま引き継ぐのは賃料的に難しいと考え、もっと安い別の物件を探していたことを明かしている。地域メディアの編集長でもある酒井洋輔さんから背中を押されたことで、「自分の中で押し込めていたけど、やっぱりここでやりたいという気持ちがあったんだな」と気づき、最終的に「はるや」の跡地での開業を決めた。もし別の場所で開業していたら心残りがあったはず、と振り返るこのエピソードは、bookpondという店が単なる不動産的な合理性ではなく、一人の常連客としての愛着から生まれたことを裏付けている。

クラウドファンディングが証明した「まちの書店」への切実な需要

開業を決めた小池さんが選んだ資金調達手段が、CAMPFIREでのクラウドファンディングだった。プロジェクトページのタイトルは「『まちの書店』に持続可能なモデルを。横浜・白楽に書店(など)をつくりたい」というもので、目標金額に届かなくても計画を実行する「All-in方式」で実施されている。結果として当初目標の150万円を達成し、その後は「ネクストゴール250万円」に挑戦する形で展開された。追加分の支援は、新刊・古書ラインナップの拡充や、トークイベントの内容・頻度の拡充に充てるとされており、単なる開業資金の確保にとどまらず、継続的な運営の質を高めるための資金という位置づけが明確にされている。

クラウドファンディングのページで最も特徴的なのは、小池さんが自らの編集者としての職務経歴を、ほとんど履歴書のような詳細さで開示している点だ。『世界文学のアーキテクチャ』(福嶋亮大氏編集担当)、雑誌『モノノメ#2』、一般社団法人デサイロでのレクチャーシリーズ企画など、具体的な仕事の実績を列記した上で、「短期的なバズを狙うコンテンツづくりではなく、じっくりとディスカッションやインタビュー、原稿のやり取りを重ねたうえで、長く読みつがれることを目的にコンテンツをつくる」という自身の編集哲学を明示している。この開示は、支援者に対して「なぜこの人が本屋を開くに値するのか」を説得する材料であると同時に、後述する「テキストを編むこと」と「場を編むこと」の連続性というテーマの伏線にもなっている。準備期間中には「まちの本屋さんがなくなることに危機感を持っている、寂しいと感じている」という声が多く寄せられたと小池さんは語っており、このクラウドファンディングの反響そのものが、まちの書店という業態に対する潜在的な需要の証明になっていたことがうかがえる。

クラウドファンディングのページタイトルに明記されている「持続可能なモデルを」という言葉は、単なるキャッチフレーズではありません。本文中では「昨今その減少について議論されている『まちの書店』の持続可能なモデルの事例をつくり、豊かな書店・出版文化をこれからも継いでいくことに(微力ながらも)寄与したい」という一文があり、この店が個人の思い出の場所を守るというレベルを超えて、業界全体の構造的な課題に対する一つの実験として位置づけられていることが分かります。

三つの顔を持つ複合施設——書店・イベントスペース・コワーキング

クラウドファンディングページでは、bookpondが提供する価値が3つの機能に整理されている。第一に、最もコアとなる「書店(+ちょっと飲食)」。編集の仕事と並行するため、当初の営業は週3回(平日夕方〜夜×2回、休日昼〜夕方×1回)を想定し、実際にやってみながら増減を判断するとされていた。選書は人文(哲学、批評、社会学、人類学、民俗学、歴史など)と生活(飲食、料理、働き方、子育て、介護、都市論、まちづくり、デザイン、工芸・民藝など)を軸としつつ、政治・経済・音楽・文学・サブカルチャー・フェミニズム・ノンフィクション・小説・詩・ビジネス・テクノロジー・サイエンスまで幅広く扱う方針が示されている。「エナジードリンクのように短期的な処方箋を注入する本ではなく、漢方薬のようにじわじわと効いてくる、世界の見方が変わる本」を揃えたいという選書の軸には、編集者としての小池さんの美意識が明確に反映されている。

第二の機能は「イベントスペース(知と創造の拠点)」だ。月1回、書店内の「特集棚」に連動したゲストを招くトークイベントをオンライン視聴可能なハイブリッド形式で開催する一方、読書会や勉強会、間貸し営業など、日常的な「ケ」の時間としてのイベントも積極的に受け入れる方針が採られている。実際に、著者DJ Yudetaroさんを招いた「熱燗ナイト」(3月・8月開催)のように、本をきっかけにイベントが自然発生的に広がっていく仕組みが機能している。第三の機能が「コワーキングスペース(まちの書斎)」で、書店・イベントの営業時間以外は「オフの書店」を開放し、利用者にはシェア型本棚(一棚書店「booktope」)も貸し出すという、単なる作業スペースではなく本と紐づいたコワーキングという独自の設計になっている。この一棚書店には、同じ白楽の「コトコト商店(仮)」など他店にも同様の取り組みがあるが、bookpondでは「いろんな人の表現を見てみたい」という思いから採用されたと1周年インタビューで語られている。

「深く刺す」から「間口を広げる」へ——編集者としての葛藤と転換

この記事の核心とも言えるのが、インタビューメディア「挑戦の人間学」(media.wakasa.jp)で小池さんが語った、開業から1年を経た選書方針の変化だ。オープン当初、棚づくりに対する意識は「自分のキュレーションを見せよう」というエゴが強かったと小池さんは率直に振り返る。しかし1年を経て、「本を売ること」「より多くの人に届けること」へと意識が変化したという。この変化の背景には、それまで小池さんが人文系のコンテンツ制作者として、人文系に関心があるコアな層に「深く刺す」ことをゴールにしてきた、という編集者としてのキャリアの性質が関係している。お店という場を持って初めて、「いい棚づくり」と「実際に本を買ってもらえること」がまったく別物であることに気づかされた、という告白は、独立系書店を営む多くの店主が抱えるであろう葛藤を、非常に具体的な言葉で表現している。

さらに小池さんは、独立系書店特有の”偏り”と”排他性”の近さについても踏み込んだ考察を語っている。稲田豊史氏の著書『本を読めなくなった人たち』の中で指摘されている「独立系書店は、来る人を選ぶような”選民的”な空間になっているのではないか」という論点に触れ、”偏り”がある以上すべての人にとって居心地のいい空間を求めることは難しいという事実を自覚した上で、少しでも間口を広げるように努力することの重要性を語っている。哲学者・朱喜哲氏がbookpondでのイベントで語った「どんな取り組みにおいても『常に誰かを排除している』という『正しくなさ』はセットだから、まずはそれを自覚しておかなければならない」という言葉に強く共感したという点も、この店の思想的な骨格を理解する上で重要な補助線になる。編集者としての「編むこと」が本質的に何かを排除する行為であるという自覚と、街に開かれた書店であろうとする実践との緊張関係を、小池さんは隠さずに言語化している。

この転換の先に見えるのが、「僕ではないいろんな人のやりたいことを実現できる場」という、オープン2年目の展望だ。2025年のイベントはほとんどすべて小池さん自身が企画・進行していたが、それを続けると内容が似通ってきてしまい、「自分がコントロールできる範囲の”編み方”」にしかならないという限界を感じ始めているという。だからこそ他者に場を開き、ともに編んでいくことこそが、この場所に予期せぬ”偶然”を引き起こすことにつながるという発想に至っている。「変身」や「自己破壊」(千葉雅也氏の言葉を借りて)につながるような、訪れた人の価値観が変わる”偶然の出会い”の場を目指すという小池さんの言葉には、編集者としてコンテンツを”編む”ことと、書店という場を”編む”ことの、明確な思想的接続が見て取れる。

正直に言うと気になった点:営業時間の変動性と、新規客への案内の分散

今回の調査でまず気になったのは、営業日・営業時間が比較的頻繁に変動している点だ。開業当初は「平日夕方〜夜×2回、休日昼〜夕方×1回」という想定だったが、1周年時点のインタビューでは「火・水17:00〜22:00、土・日14:00〜20:00」という体制に変わっており、さらに季節によって開始時刻が前後する「サマータイム」的な運用も行われている。個人経営で編集業と兼業している以上、この柔軟性自体は当然の経営判断だが、初めて訪れたいと考える新規客にとっては、訪問前に必ずSNSで最新の営業時間を確認する手間が発生する点は留意しておきたい。

もう一つ気になったのは、店の全体像を把握するための情報が、note連載・クラウドファンディングページ・複数の地域メディアのインタビュー・SNSといった形で分散している点だ。これは裏を返せば「一次情報が非常に豊富である」という強みでもあるのだが、bookpondという店を初めて知る読者が、書店・喫茶・イベント・コワーキングという4つの機能をワンストップで理解できる公式サイトのような窓口を持っていれば、店の全体像がより伝わりやすくなるのではないかと感じた。とはいえ、この情報の分散自体も、「自分のメディアを持つ」ことを目指してきた小池さんが、店という物理的な場に加えてnoteやSNSといった複数のメディアを併走させている、編集者らしい情報発信の姿勢の表れとも言えるだろう。

白楽は「学生比率43%」の複合商圏。人文書中心の書店が根を張る土地の意味

店舗立地研究所が整理した白楽駅半径1km圏のデータでは、夜間人口46,211人・昼間人口44,710人、昼夜比0.97という「居住者優位の生活商圏」であることが明らかになっている。最大の特徴は、昼間人口の43.1%(19,267人)を生徒・学生が占めていることで、これは近接する神奈川大学横浜キャンパスの立地に起因する。年収700万円以上の高所得世帯比率は29.4%(7,892世帯)と全国平均の約1.4倍に達しており、都心方面へのアクセスの良さから、住宅コストが比較的リーズナブルな白楽エリアに専門職・共働き世帯が居住する構造がうかがえる。一方で単身世帯は56.4%(15,129世帯)と過半数を占め、学生や若年就業者を中心とした少人数世帯が主流の商圏でもある。

この「住民+学生」の二層構造は、bookpondの選書方針や利用実態と自然に噛み合っている。人文書を中心とする硬めの選書は、大学近接エリアという知的な土壌と整合的である一方、実際に売れているのはエッセイや詩集など、装丁がおしゃれでライフスタイルに馴染む本だという小池さんの実感が示すように、学生街だからといって学術書がそのまま売れるわけではない、というギャップも存在する。また、年間小売販売額が約295.8億円、来街倍率が0.61倍(購買力の約39%が商圏外に流出)という数値からも分かるように、白楽は横浜駅など大型商業施設への購買流出が起きている「住宅地型商圏」であり、大量集客を前提としたビジネスモデルは成立しにくい。1日数十人規模の来店で成立する「まちの書斎」というコンセプトは、この商圏の身の丈に合った、無理のない設計だと言えるだろう。

白楽駅1km圏の指標 公開値 「bookpond」への読み替え
生徒・学生数 19,267人(昼間人口の43.1%) 神奈川大学に近接する土地柄が、人文書中心の選書と読書会・勉強会というイベント機能の需要を支える土台になっています。
単身世帯比率 56.4%(15,129世帯) 「まちの書斎」というコワーキング機能や、一人で気軽に立ち寄れる「間口の広さ」というコンセプトと相性の良い居住構造です。
年収700万円以上世帯比率 29.4%(7,892世帯・全国平均の約1.4倍) 書籍代・喫茶喫酒代を無理なく支出できる、都心通勤層の一定の購買力が地域内に存在しています。
来街倍率(商業人口÷夜間人口) 0.61倍(購買流出型商圏) 大型商業施設に依存しない、少人数・高付加価値型の個人店経営が成立しやすい土地の性格と整合的です。
飲食料品小売業・生活関連サービス業 洗濯・理容・美容・浴場業109事業所など集積 六角橋商店街を中心とした「地元民の日常使い」の商業集積の中に、bookpondも一つの選択肢として自然に位置づけられています。

※白楽駅の商圏データは、国勢調査・経済センサス等を基礎として店舗立地研究所が整理した半径1km圏の公開値です。統計値は駅周辺の傾向を示すものであって、店舗の実際の来店客数や商圏そのものを表すものではありません。

店舗立地研究所が「気になる」と感じた3つのポイント

1.一次情報の質と量が突出している

全27回のnote連載、詳細なクラウドファンディングページ、複数メディアのインタビューと、開業前から現在まで一貫して発信されている記録の厚みは、他の個人店ではなかなか見られない稀有な資産です。

2.「継承」のドラマとしての説得力

老朽化や経営難ではなく「たまたま」の移転で終わった前身の跡地を、一常連客が引き継ぐという経緯は、感情移入しやすく記事としての物語性が非常に高い構造になっています。

3.思想の”揺れ”を隠さない誠実さ

「エゴが強かった」「気づかされた」といった率直な言葉で選書方針の失敗や転換を語る姿勢は、完成された成功譚ではなく、今も模索中の実験であることを伝える説得力を持っています。

店舗経営の視点:補助金活用・電気代見直しも検討余地

紙の本を軸にした複合店舗という業態は、店舗改装費、書籍・什器の仕入れ、そしてコーヒーマシンや空調・照明などの継続的な運転コストが重なりやすい業態でもある。以下は、bookpondが現在こうした制度を実際に利用している、または利用を必要としていると確認したものではない。あくまで、前身店舗の跡地を引き継いで複合的な業態を営む、同様の個人経営のブックカフェ・書店・コワーキング事業者が、今後の投資を検討する際に一般的に選択肢となり得る制度を、参考として整理したものである。

販路開拓・空間デザインへの投資

bookpondでは、クリエイティブディレクションやロゴ・ビジュアル制作、そして建築家による空間設計を外部の専門家に依頼している経緯が公開情報から確認できる。看板・Webサイト・EC・チラシ・店舗改装など、事業計画や公募要件に合致すれば、こうした販路開拓・ブランディングに関わる投資は、小規模事業者持続化補助金等の検討対象になり得る場合がある。

事業承継・引継ぎに関わる補助金

bookpondは、前身「ブックカフェはるや」の物件・立地・顧客の一部を引き継ぐ形で開業した店舗である。このように既存店舗の場所や屋号、顧客基盤を引き継いで新たに事業を始めるケースでは、事業承継・引継ぎ補助金(専門家活用類型等)が制度上の検討対象になる場合がある。ただし、これは同様のケースにおける一般的な制度の存在を紹介するものであり、bookpondが実際にこの補助金を活用したことを示す記述は、今回確認した公開情報の中には見当たらなかった。

デジタル化・省力化

コワーキングスペースの座席・利用時間の管理、イベントの予約受付、書店部分のレジ・在庫管理など、複合業態ゆえに管理項目が多岐にわたる場合、こうした業務を支えるITツールの導入費用の一部については、デジタル化・AI導入補助金等の検討対象になる場合がある。一人または少人数運営が前提となる個人店にとって、こうした省力化投資は売上拡大策と並んで検討する価値のある選択肢だ。

光熱費の見直し

書店・喫茶・コワーキングという3つの機能を一つの空間で運営する場合、照明・空調・給湯(ドリンク提供用)といった電力消費が、営業時間の長さに比例して継続的に発生しやすい。契約プランや使用時間帯、設備の効率を確認し、必要に応じて省エネ設備への切り替えや電力契約の比較を行うことは、固定費の見直しとして検討余地がある。横浜市では省エネルギー化支援助成金の募集が行われている時期もあるが、募集期間や予算残額、対象設備は変わるため、必ず申請時点の公式情報を確認する必要がある。

補助金は、採択や交付決定が約束されるものではなく、申請前に契約・発注・支払いを行うと対象外になる制度もある。まず店舗の課題と必要な投資を整理し、その後に対象制度、公募期間、補助対象経費を確認する順番が重要だ。また、電気代についても「契約を変えれば必ず安くなる」とは限らないため、直近12か月程度の請求データをもとに、契約条件や解約条件まで含めて比較することが基本になる。

【街の店舗分析まとめ】

「bookpond」は、書店という業態が全国的に苦境に立たされている中で、一人のフリーランス編集者が、行きつけの店への愛着とクラウドファンディングという手法を通じて、「まちの書店」の持続可能なモデルを実験している店だ。「書店(など)」という名乗り方に象徴されるように、書店・喫茶喫酒・イベントスペース・コワーキングという複数の機能を一つの空間に編み込み、開業から1年の間に「深く刺す」選書から「間口を広げる」選書へと自らの方針を転換させてきた過程には、編集者としての職能と、街に開かれた場を運営することの間で揺れ続ける、誠実な思考の軌跡が刻まれている。まちの書店が消えていくことへの危機感が、クラウドファンディングという形で数字として可視化されたことも含め、この店の物語は、記事として深く掘り下げるだけの十分な厚みと材料を備えていると言える。

この記事は公開情報を基にした分析であり、bookpondの運営者様から直接お話を伺えたわけではありません。選書方針の具体的な変化の実態、イベントの持ち込み企画がどの程度実現しているか、10年続けるという目標に向けた今後の展望など、公開情報だけでは分からないことが数多くあります。もし取材の機会をいただけましたら、小池さんが「テキストを編むこと」と「場を編むこと」の違いをどのように日々実感し、これからどう場を他者に開いていこうとしているのかについて、より深く、正確な記事としてお届けできればと思ってっております。また、本記事の内容に事実と異なる点がございましたら、下記のお問い合わせ先までご連絡いただけますと幸いです。

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出典・確認資料

執筆・分析:太田 満/編集:店舗立地研究所編集部

本記事は店舗の優劣や経営状態を格付けするものではありません。公開情報を用いて、地域店舗の魅力と立地・店舗経営上の可能性を独自に考察したものです。売上、利益、実際の顧客構成等を推定・保証するものではありません。営業日・営業時間・イベント内容は変更されることがあるため、ご来店前に必ず公式SNSでの最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

太田 満のアバター 太田 満 店舗立地研究所及び合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ代表

合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ 代表社員
店舗立地研究所 代表

株式会社みずほ銀行にて16年間、数百社の中小企業オーナー・個人事業主の渉外・融資審査・経営相談業務に従事。
2021年独立後は創業支援・店舗出店支援を多数手がける現役コンサルティング会社代表。

専門は店舗事業の商圏(エリア)分析。2,000以上のエリア分析を実施し、「負けない店舗経営」「失敗しないフランチャイズ選び」を支援中。

資格:中小企業診断士・宅地建物取引士・フランチャイズオーガナイザーのほか、賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・不動産証券化マスター・M&Aシニアエキスパートなどの資格も保有。

第19回(2026年4月30日締切)小規模事業者持続化補助金の申請者に対して、KLA(KDDI Location Analyzer)を用いた自社商圏分析サポートを実施。

その他、税理士事務所様などと共催の補助金セミナーなども行っており、店舗立地や補助金などのセミナー依頼も、公式LINEからお気軽にお問い合わせくださいませ。

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