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映画『シェフ』に心を動かされた男が挑む、間借り営業の朝キューバサンド。元住吉「至福のキューバサンド」、学芸大学からの再出発

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街の店舗分析|こだわり専門店編

映画『シェフ』に心を動かされた男が挑む、間借り営業の朝キューバサンド。元住吉「至福のキューバサンド」、学芸大学からの再出発

東急東横線・目黒線「元住吉駅」東口から徒歩2分、モトスミ・オズ通り商店街の一角。夜は「牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて」というオイスターバルとして営業する店の同じ空間を、朝から昼過ぎまで間借りして営業するキューバサンド専門店がある。店名は「至福のキューバサンド」。店主の藤原さんは、キューバサンド職人が主人公の映画『シェフ/三ツ星フードトラック始めました』に心を動かされ、キューバサンド屋を食べ歩いた末に、この専門店をオープンさせたという。東京・学芸大学での営業を経て、2022年7月28日に元住吉へ移転。今回はこの「間借り×専門店」というユニークな業態を、元住吉の商圏データとともに分析する。

元住吉駅東口徒歩2分
2022年7月28日 元住吉オープン(学芸大学より移転)
映画『シェフ』に感化されて起業
夜営業バルを間借りする独自業態
自家製ローストポークのキューバサンド専門店
「街の店舗分析」とは

店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なる店舗紹介や格付けではなく、実在するお店を通じて「なぜこの場所で、この業態が支持されるのか」を考えます。

今回取り上げる「至福のキューバサンド」は、キューバサンド専門店という全国的にもまだ珍しい業態に加え、既存店の空間を時間帯で借りる「間借り営業」という出店形態そのものが興味深い一軒です。一本の映画から始まったストーリーと、その業態の工夫という2つの視点から、この店の魅力を紹介します。

先に結論:「至福のキューバサンド」は、一本の映画への強い思いから始まったキューバサンド専門店であり、既存のバルの空間を時間帯で借りる「間借り営業」という工夫によって、朝から昼過ぎまでの時間帯にキューバサンドという専門業態を成立させている店です。マスタードを塗ったバゲットに自家製ローストポーク、ハム、チーズ、ピクルスをサンドし、バターを塗って焼き上げるという明確な調理の型があり、バゲット一本を使った「メガキューバサンド」という看板商品でも知られています。

「至福のキューバサンド」はどんなお店?

至福のキューバサンドは、神奈川県川崎市中原区木月2-5-12に位置し、東急東横線・目黒線「元住吉駅」東口から徒歩2分(食べログ表記では駅から110m)、モトスミ・オズ通り商店街にある「牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて」という店舗の中で営業している。食べログの店舗情報によれば、営業時間は9:00〜15:30(L.O.15:00)、定休日は不定休で「平日のうち曜日不定休にて概ね2日程お休み」とされている。席数は18席(カウンター4席・テーブル14席)で、個室・貸切はなし、決済はクレジットカード・電子マネー・QRコード決済のいずれにも対応している。子供可(乳児・未就学児・小学生可)、ベビーカー入店可という記載もあり、商店街に暮らすファミリー層にも利用しやすい設計になっている。オープン日は食べログ・share-restaurant.bizの両方で「2022年7月28日」と一致しており、これは確実な事実として確認できる。

食べログには「このお店は『目黒区鷹番2-21-17』から移転しています」という記載があり、移転前の店舗は東京都目黒区鷹番の「学大横丁」内、東急東横線「学芸大学駅」西口から徒歩3分の場所にあったことが確認できる。移転前の営業時間は平日9:00〜14:30、土日祝10:30〜14:30、席数8席というごく小規模な間借り営業だったことも、当時の食べログ店舗情報(現在は移転済みとして表示)から確認できる。

店舗名
至福のキューバサンド
所在地
神奈川県川崎市中原区木月2-5-12「牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて」内
アクセス
東急東横線・目黒線「元住吉駅」東口から徒歩2分(駅から約110m)
営業形態
夜営業のオイスターバルの店内を間借りし、朝〜昼過ぎの時間帯に営業
開業日
2022年7月28日(元住吉)/学芸大学「学大横丁」からの移転
業態
キューバサンド専門店
営業時間
9:00〜15:30(L.O.15:00)※媒体により8:00〜/9:00〜の表記差あり
定休日
不定休(平日のうち概ね2日程度)
席数
18席(カウンター4席・テーブル14席)、個室・貸切なし
予算
1,000〜1,999円程度
看板商品
キューバサンド(レギュラー900円/ハーフ500円)、メガキューバサンド(1,700円)
公式情報
公式Instagram(@shifuku_no_cubasand)
オリジナリティ①:一本の映画に心を動かされて始まった専門店

この店の最大の個性は、そのまま開業の原点にある。公式Instagramのプロフィールには「映画『#CHEF』に感化されて#キューバサンド 屋はじめました!」という一文があり、店主自身がこの店の出発点を明確に語っている。『シェフ/三ツ星フードトラック始めました』(原題:Chef)は、一流レストランのシェフがフードトラックでキューバサンドを作り直す姿を描いた映画で、日本でもキューバサンドという料理を広く知らしめた作品として知られている。YouTube「キッチンすーさんの地元鶴見グルメ旅」の訪問記でも「ご店主、あの映画シェフが大好きでキューバサンド専門店をオープンさせたという」と紹介されており、店主のキューバサンドへの思いが一本の映画から始まったという事実は、複数の媒体で一致して確認できる。

また、食べログの店舗紹介文には「キューバサンド屋を食べ歩いた店主が辿り着いた絶品のキューバサンドの専門店」という記載があり、単に映画に影響を受けただけでなく、実際に都内のキューバサンド専門店を食べ歩いた末に自身の店の味を作り上げたという経緯もうかがえる。個人ブログ(note)の記事では、都内には夜はバーを営業しながらキューバサンドを提供する店もあったが既に閉業したという記述もあり、キューバサンド専門店自体が生まれては消えていく、決して簡単ではない業態であることが分かる。その中で「至福のキューバサンド」は学芸大学時代から数えて営業を継続しており、一定の支持を積み重ねてきたと考えられる。

「好きなものを、好きな形で届ける」という原点が、店の説得力になっている。映画という誰にでも伝わりやすいきっかけと、実際に食べ歩いて味を追求したという行動の両方が確認できる点は、単なる思いつきの業態ではないことの裏付けになっています。

オリジナリティ②:既存店を間借りする、時間帯シェア型の出店スタイル

至福のキューバサンドのもう一つの特徴は、その出店形態そのものにある。食べログのアクセス欄には「オズ通り商店街にある『牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて』内で営業中」と明記されており、note個人ブログでも「間借り営業の店」と紹介されている。「牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて」は、複数の求人・グルメ媒体の情報によれば17:00〜24:00頃に営業するオイスターバルであり、至福のキューバサンドはこの店が営業していない朝から昼過ぎの時間帯(9:00〜15:30頃)に、同じ空間を借りて営業している。夜はワインとオイスターを楽しむ大人の空間が、朝には香ばしいキューバサンドの店に生まれ変わるという、1つの物件を時間帯で分け合う出店スタイルは、限られた店舗物件を有効活用する工夫として興味深い。

この業態は、学芸大学の「学大横丁」時代から一貫しており、移転後も「間借り営業」という形式そのものは変えずに元住吉へ拠点を移したことがうかがえる。過大な固定費を抱えずに専門性の高い業態を継続できるという点で、独立系の小さな専門店が生き残るための一つの合理的な選択と見ることができる。

オリジナリティ③:自家製ローストポークとバターの香りが決め手のキューバサンド

看板商品のキューバサンドは、マスタードを塗ったバゲットに、柑橘系の果汁やスパイスで丁寧にマリネしてホロホロになるまで火を通した自家製プルドポーク、厳選したハム、チーズ、ピクルスをサンドし、表面にバターをたっぷり塗って押し焼くホットサンドだ。share-restaurant.bizの開業時の紹介記事によれば、豚肉のマリネによってスパイシーさの奥にフルーティーさも感じられる味に仕上げているといい、バターの豊潤な香りと味わいがサクサクの食感に加わることで「至福なひととき」を演出しているという。オーダーを受けてから焼き上げる提供スタイルのため、出来立てのアツアツを楽しめる点も特徴で、テイクアウトの場合もフライパンで温め直せばサクサク感が復活するという配慮まで案内されている。

看板商品のレギュラー(900円)・ハーフ(500円)に加え、バゲット一本を丸ごと使った「メガキューバサンド」(1,700円)は、一人で食べ切るもよし、みんなでシェアするもよしの目玉商品として紹介されている。ほかにも、伸びの良いモッツァレラとクリームチーズを重ねた「メルティーチーズキューバサンド」、イチジクのジャムとクリームチーズを合わせた「無花果のキューバサンド」といった創作系のメニューも揃い、定番のキューバサンドから一歩踏み出したバリエーションが用意されている点も見逃せない。食べログの口コミでは「外はカリッと香ばしく、中はジューシーな具材がたっぷり詰まったキューバサンドでした。パンの食感とお肉の旨味、チーズのコクが絶妙にマッチしていて、一口ごとに満足感がある」といった評価が寄せられている。

元住吉は「商店街密着型・高所得ギャップ商圏」。専門業態の間借り営業と相性が良い立地

店舗立地研究所が整理した元住吉駅半径1km圏のデータでは、夜間人口58,651人に対し昼間人口37,249人、昼夜比0.64という「居住者が地域内で消費する住宅街密着型」の商圏であることが示されている。全長約550mに約180店舗が軒を連ねる「モトスミ・ブレーメン通り商店街」と、至福のキューバサンドが店を構える「モトスミ・オズ通り商店街」という2つの大型商店街を核とした、生活密着度の高いエリアだ。飲食店数292店舗(14M4Wベース)という数値は、商店街エリアとしての商業集積の厚みを物語っている。

特筆すべきは、商店街エリアという庶民的な外観とはギャップのある、居住者の所得水準の高さだ。年収700万円以上の高所得世帯比率は37.9%(13,023世帯)に達し、全国平均(約20.9%)の約1.8倍、神奈川県平均(約27.3%)を10ポイント以上上回る。年収1,000万円以上の世帯も19.4%(6,681世帯)存在し、渋谷まで17分・横浜まで15分という通勤利便性の高さが、大企業に勤める高収入の共働き世帯を引きつけていると考えられる。総世帯数34,399世帯のうち1人世帯が55.9%を占める一方、生産年齢人口比率は70.3%と全国・県平均を大きく上回り、高齢化率14.6%という若い人口構造も特徴だ。こうした「単身者からファミリーまで幅広い年齢層が、それぞれ相応の購買力を持って混在する」という商圏特性は、朝の通勤前や昼下がりに立ち寄る単身の就業者から、休日に商店街を歩くファミリーまで、幅広い客層を受け止められるキューバサンドという業態と相性が良いといえる。

元住吉駅1km圏の指標 公開値 「至福のキューバサンド」への読み替え
昼夜人口比 0.64(住宅街密着型商圏) 朝〜昼過ぎの営業時間は、通勤前・買い物途中の居住者との接点を作りやすい時間帯設定です。
高所得世帯比率 37.9%(年収700万円以上) 900〜1,700円という単価のキューバサンドへの支出余力がある層が、商店街エリアとしては高い比率で存在します。
1人世帯比率 55.9%(19,219世帯) 一人でも入りやすい業態・価格帯であることが、単身者の多い商圏特性と噛み合っています。
生産年齢人口比率 70.3%(全国57.4%を大幅に上回る) 朝食・軽食需要を持つ現役世代の比率が高く、9:00〜15:30という営業時間との相性が良い構造です。
商店街の店舗集積 2大商店街に計180店舗以上 商店街内での「間借り営業」という出店形態が成立しやすい、店舗物件が密集したエリアです。

※元住吉駅の商圏データは、国勢調査・経済センサス等を基礎として店舗立地研究所が整理した半径1km圏の公開値です。統計項目により基準年が異なり、店舗の実際の来店客数や売上を示すものではありません。

店舗立地研究所が「気になる」と感じた3つのポイント
1.映画から始まった一貫した情熱

映画『シェフ』への思いをきっかけに、実際に食べ歩いて味を追求したという行動まで確認できる点に、業態としての説得力があります。

2.時間帯シェア型の間借り営業

夜営業のバルの空間を朝〜昼過ぎに借りるという工夫は、固定費を抑えながら専門業態を継続する合理的な選択として参考になります。

3.学芸大学からの移転という継続力

間借り営業という形式を保ったまま元住吉へ拠点を移し、営業を継続してきたこと自体が、この業態への支持の積み重ねを示しています。

【街の店舗分析まとめ】

「至福のキューバサンド」は、映画『シェフ』に心を動かされた店主が、実際にキューバサンド専門店を食べ歩いた末に開いた一軒だ。学芸大学の小さな間借り店舗から始まり、2022年7月に元住吉のオイスターバルの空間を借りる形で営業を継続してきたという経緯は、専門性の高い業態を無理なく続けるための、一つの実践的なモデルとして参考になる。商店街エリアという庶民的な外観の裏に高所得世帯比率37.9%というギャップを抱える元住吉という商圏でも、こうした専門店ならではの明確な個性が、幅広い客層からの支持を集める土台になっていると考えられる。

この記事は公開情報を基にした分析であり、藤原さんご本人から直接お話を伺えたわけではありません。映画『シェフ』のどのシーンに最も心を動かされたのか、学芸大学から元住吉への移転を決めた具体的な経緯、間借り営業先である「牡蠣とワインと魚と肉と。元住吉にて」との出会いのきっかけなど、公開情報だけでは分からないことが数多くあるはずです。もし取材の機会をいただけましたら、開業の経緯やお店づくりの背景について直接お伺いし、改めて記事としてお届けできればと思っております。

地域のお店を、商圏データと一緒に紹介します

店舗立地研究所では、飲食店、美容サロン、整体・リラクゼーション、パーソナルジム、専門小売店など、地域で営業する店舗の魅力を、立地・商圏・顧客層の視点から紹介しています。

掲載・取材をご希望の店舗様は、公式LINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。店舗の出店・移転・商圏分析、事業計画、資金調達、補助金活用、集客、省力化のご相談についても対応しております。

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出典・確認資料

執筆・分析:太田 満/編集:店舗立地研究所編集部

本記事は店舗の優劣や経営状態を格付けするものではありません。公開情報を用いて、地域店舗の魅力と立地・店舗経営上の可能性を独自に考察したものです。売上、利益、実際の顧客構成等を推定・保証するものではありません。営業時間・定休日は不定休のため変動があります。ご来店前に必ず公式Instagramでの最新情報をご確認ください。

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この記事を書いた人

太田 満のアバター 太田 満 店舗立地研究所及び合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ代表

合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ 代表社員
店舗立地研究所 代表

株式会社みずほ銀行にて16年間、数百社の中小企業オーナー・個人事業主の渉外・融資審査・経営相談業務に従事。
2021年独立後は創業支援・店舗出店支援を多数手がける現役コンサルティング会社代表。

専門は店舗事業の商圏(エリア)分析。2,000以上のエリア分析を実施し、「負けない店舗経営」「失敗しないフランチャイズ選び」を支援中。

資格:中小企業診断士・宅地建物取引士・フランチャイズオーガナイザーのほか、賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・不動産証券化マスター・M&Aシニアエキスパートなどの資格も保有。

第19回(2026年4月30日締切)小規模事業者持続化補助金の申請者に対して、KLA(KDDI Location Analyzer)を用いた自社商圏分析サポートを実施。

その他、税理士事務所様などと共催の補助金セミナーなども行っており、店舗立地や補助金などのセミナー依頼も、公式LINEからお気軽にお問い合わせくださいませ。

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