中学の同級生3人が始めた「STAY FRESH Coffee&Foods」。
大倉山駅徒歩1分、カフェ×古着×美容室の複合店を立地から分析
大倉山駅から徒歩1分、エルム通り商店街のギリシャ風の街並みにひときわ目立つ真っ白なビル「フォーチュン大倉山」。ここに2024年10月19日にオープンしたのが「STAY FRESH Coffee&Foods」です。1階はカフェ、2階はカフェと古着屋、3階は美容室、屋上はテラスという構成で、始めたのは中学時代の同級生3人。1つの業態では成立しにくい採算を、複数の業態で建物ごとシェアするという、新しい個人店のあり方を体現している店舗です。公開情報と大倉山駅の商圏データから、店舗立地研究所が独自に読み解きます。
カフェ×古着屋×美容室の複合店舗
中学の同級生3人での創業
屋上テラスあり・28席
公開情報による独自分析
店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なるグルメ紹介や店舗の格付けではなく、実在するお店を通じて、「なぜこの場所で、この業態が支持されるのか」を考えます。
公開情報をもとにした分析では、確認できた事実と店舗立地研究所による考察・提案を区別して掲載します。店舗への取材が実現した場合は、オーナーの声や現地で確認した情報を加えた「リアル店舗レポート」として、さらに詳しくご紹介します。なお、本記事で扱う店舗は2024年10月開業のため、当研究所が主に取り上げる「直近の新規開業」よりやや開業時期が前になりますが、複合店舗という業態の切り口として今回あらためて分析対象としました。
個人店の多くは、単一の業態で単一のフロアの採算を成立させる必要があります。しかしSTAY FRESHは、カフェ・古着屋・美容室という3つの異なる業態を1つの建物の各フロアに配置し、それぞれの客が建物全体を回遊する構造を作っています。中学の同級生3人がそれぞれ得意な業態を持ち寄って共同創業したという経緯を踏まえると、この複合戦略には、単独出店にはない独自の合理性が見えてきます。
STAY FRESH Coffee&Foodsは、神奈川県横浜市港北区大倉山三丁目2-31、東急東横線・大倉山駅から徒歩1分(食べログ表記113m)にある「フォーチュン大倉山」というビルの1階から屋上までを使ったカフェ・古着屋・美容室の複合店です。地域メディアの取材記事によると、周辺のエルム通り商店街はギリシャ風の白い柱や壁で外装をそろえた特徴的な街並みで知られており、その中でも一段と目立つ真っ白なビルにこの店は入っています。2024年10月19日にオープンし、公式Instagramによると1階から2階・4階(屋上)テラスまでがカフェ、2階が古着屋、3階が美容室という構成です。
取材記事によると、この店を始めたのはカフェのオーナー夫妻と、3階の美容室のスタイリストを含む3人で、いずれも中学時代の同級生だったといいます。「一緒にやらないか」という声かけから、この複合店が生まれたと紹介されています。食べログの店舗情報では、席数は28席(カウンター2席、テーブル18席、テラス8席)、営業時間は月・水・木・日が11:00〜21:00、金・土が11:00〜22:30、火曜定休となっています。屋上テラス席のみ喫煙可の分煙対応で、カード・電子マネー・QRコード決済にも幅広く対応しています。カフェの看板メニューは、スコーンとプリンを組み合わせた「ドッチモ。」というデザートで、ハンドドリップで淹れるコーヒーとの相性が地域メディアでも紹介されています。
- 店舗名
- STAY FRESH Coffee&Foods(ステイフレッシュ)
- 所在地
- 神奈川県横浜市港北区大倉山3-2-31 フォーチュン大倉山
- アクセス
- 東急東横線・大倉山駅から徒歩1分(113m)、エルム通り商店街沿い
- 開業
- 2024年10月19日オープン(中学の同級生3人による共同創業)
- 構成
- 1F・2F・屋上テラス=カフェ、2F=古着屋、3F=美容室
- 営業日時
- 月・水・木・日 11:00〜21:00、金・土 11:00〜22:30、火曜定休(公開情報時点。詳細は要確認)
- 座席・設備
- 28席(カウンター2席、テーブル18席、テラス8席)、分煙(屋上テラスのみ喫煙可)、駐車場なし
- 公式情報
- 公式Instagram(STAY FRESH Coffee&Foods) / 食べログ「STAY FRESH COFFEE&FOODS」
カフェ・古着屋・美容室という、それぞれ単独でも成立しうる業態を1つの建物にまとめることで、賃料や集客コストを分散させ、建物全体としての来店動機を増やしています。
複数業態が同じ空間を共有するには、日々の運営調整や利害の一致が欠かせません。学生時代からの信頼関係が、この複合店を支える見えない基盤になっています。
高い建物が少ない大倉山で、周囲を見渡せる屋上テラス席を確保しています。地上階の店舗にはない体験価値を提供できる、立地を最大限に活かした設計です。
店舗立地研究所では以前、大倉山の別の店舗「Kayagi(かやぎ)」や「cafe works(カフェワークス)」についても分析記事を掲載しました。Kayagiは前身店シェフによる独立開業という「人を継ぐ」形の跡地承継、cafe worksは建築事務所が自ら運営する「場所の役割を継ぐ」形の跡地承継として、それぞれ単独の業態を1つの店舗内で深く追求する戦略を取っていました。一方、STAY FRESHはこの2店とは全く異なる方向性、つまり「複数の業態を1つの建物内に並べる」という水平方向の複合戦略を採用しています。
この複合戦略の面白さは、それぞれの業態が独立採算を目指すのではなく、互いの客を呼び込み合う関係にある点です。取材記事によると、2階の古着屋にはカフェ利用のためのテーブル席が用意されており、3階の美容室では「カットしながら1階のコーヒーも飲める」という案内がされています。カフェに来た客が古着を見て、古着を見に来た客がカフェに立ち寄り、美容室の待ち時間にコーヒーを飲む。このように、来店動機が異なる3つの客層が同じ建物の中で自然に交差する構造が意図的に作られているように見えます。単独の業態であれば取り込めない多様な客層を、建物という単位でまとめて取り込んでいる点が、この店の最大の強みだと考えられます。
| 比較項目 | Kayagi(人を継ぐ・単独業態深化) | cafe works(場所の役割を継ぐ・単独業態深化) | STAY FRESH(複数業態の水平複合) |
|---|---|---|---|
| 戦略の方向性 | 1つの業態を深く掘る(垂直方向) | 1つの業態を深く掘る(垂直方向) | 複数の業態を並べる(水平方向) |
| 採算の考え方 | 単独業態の売上で採算を取る | 飲食単体ではなく事務所全体で評価 | 3業態の賃料・集客コストを分散 |
| 創業の土台 | 前身店シェフとしての技術と関係 | 同建物内の事務所としての立場 | 中学の同級生3人という信頼関係 |
| 顧客の広がり方 | 常連客との関係を積み重ねる | 建築ファンや地域住民との接点 | 3業態それぞれの客が建物内を回遊 |
| 独自の資産 | 店名に込めた家業と花言葉のストーリー | 妹島和世設計という唯一無二の立地 | 屋上テラスという開放的な体験価値 |
STAY FRESHは、1つの業態を極める道ではなく、信頼できる仲間と業態をシェアし、建物全体で客を呼び込む道を選んでいます。個人店が単独で乗り越えにくい賃料や集客の壁を、複合化という形で乗り越えている点に、この店の独自性があります。
店舗立地研究所が整理した大倉山駅半径1km圏のデータでは、夜間人口52,054人、昼間人口30,870人、昼夜比0.60という数値が示されています。これは大型商業施設やオフィスビル群をほとんど持たない、典型的な住宅地・ベッドタウン型商圏であることを表しています。総世帯数は25,233世帯で、1人世帯が43.3%と最大多数を占めながらも、2人以上世帯の合計が56.7%を占めるという「単身×ファミリー共存型」の構造が特徴です。住居形態では持ち家が54.9%を占め、一戸建て比率も24.0%と高く、長期定住傾向の強い住宅地であることがうかがえます。さらに高所得世帯比率(年収700万円以上)は33.4%、年収1,000万円以上世帯も16.6%に達しており、全国平均の約1.6〜2倍という高い水準です。
この商圏構造を踏まえると、STAY FRESHが選んだ複合戦略には、興味深い合理性が見えてきます。来街倍率(商業人口÷夜間人口)は0.74倍と1倍を下回り、住民の購買力の多くが横浜駅や綱島・日吉・菊名といった近隣の商業集積地へ流出している実態が数値から浮かび上がります。単独業態の専門店であれば1つの目的でしか呼び込めない客を、カフェ・古着・美容室という複数の目的で呼び込めるSTAY FRESHのような複合店は、「地元で用事を済ませたい」という住民の複数のニーズに一度で応えられる強みを持っています。また、子育てファミリー世帯が一定数存在する大倉山では、取材記事にある「子ども用の古着も多い」という品揃えが、ファミリー層の複数世代の来店動機を同時に満たしている点も見逃せません。
| 大倉山駅1km圏の指標 | 公開値 | STAY FRESHへの読み替え |
|---|---|---|
| 昼夜比・来街倍率 | 昼夜比0.60/来街倍率0.74倍 | 地元での複数目的消費(カフェ・古着・美容)を一度に満たせる複合店の強みが活きる構造です。 |
| 持ち家比率 | 54.9%(一戸建て24.0%) | 長期定住者が多く、美容室のような定期利用を前提とする業態との組み合わせが機能しやすい土壌です。 |
| 高所得世帯比率 | 33.4%(年収700万円以上) | カフェの単価に加え、古着や美容といった中価格帯の消費を積み重ねられる購買力があります。 |
| 子育てファミリー比率 | 15歳未満12.4%(全国11.9%を上回る) | 子ども用古着の品揃えが、ファミリー層の複数世代の来店動機を同時に満たしています。 |
| 飲食店数 | 113店舗 | カフェ単体の競合は多い一方、複合業態という差別化軸を持つ店舗は限られています。 |
※駅別数値は2020年国勢調査、2021年経済センサス等を基礎として店舗立地研究所が整理した半径1km圏の公開値です。統計項目により基準年が異なり、店舗の実際の来店客数や売上を示すものではありません。
個人店の出店では、まず業態を1つに絞り、その専門性で勝負するのが一般的な考え方です。しかしSTAY FRESHは、カフェ・古着屋・美容室という3つの異なる専門性を1つの建物にまとめるという、逆の発想を取っています。それぞれの業態が単独で立ち上げるよりも、3人で1つの建物をまとめて借りることで、賃料負担を分散しながら、来店動機の異なる客層を同じ空間に呼び込むことができています。中学時代からの同級生という強固な信頼関係があったからこそ、この複雑な共同運営が実現できているのだと考えられます。
取材記事によると、フォーチュン大倉山の屋上はテラス席として利用でき、周囲に高い建物がないため大倉山の街を見渡せるといいます。この開放感のある屋上体験は、通常のカフェの店内席では提供できない価値であり、複合店として建物全体を使うという発想がなければ生まれなかった強みだといえます。3階の美容室からも「日中は大倉山公園の緑の山がよく見える」という声が紹介されており、建物の各フロアがそれぞれ異なる景観価値を持っている点も、この店の隠れた魅力です。
取材記事によると、2階には古着屋がありながら、カフェ利用のためのテーブル席も併設されているといいます。この設計は、階を移動しても「カフェ利用者」でいられるという緩やかな接続を生み出しており、1階のカフェで完結せずに上階へと自然に足を運ばせる仕掛けになっています。子ども用の古着も充実しているとのことで、ファミリー層が古着を選びながらカフェメニューを楽しむという、複合店らしい過ごし方ができる設計だと考えられます。
ここからは、店舗の現在の顧客構成や実施状況を確認したものではなく、公開情報と商圏特性から考えられる今後の可能性です。すでに実施されている取組が含まれる可能性があります。
「カットしながら1階のコーヒーも飲める」という美容室の特徴を踏まえると、カット・カラーの待ち時間が長い施術メニューを、カフェのセットメニューと組み合わせて案内することで、美容室単体では取り込みにくい滞在時間の長い顧客層を掘り起こせそうです。
子ども用古着の品揃えと、大倉山の子育てファミリー比率の高さを踏まえると、親が古着を選んでいる間に子どもと一緒にカフェメニューを楽しめる、ファミリー向けの回遊導線をさらに強化できる余地がありそうです。
周囲に高い建物がない大倉山の景観を活かした屋上テラスは、日没前後の時間帯に絞った限定利用など、テラスそのものを目的とした来店動機を作れる余地がありそうです。
1階の外観だけを見ると、カフェ単体の店舗に見えてしまう可能性があります。2階に古着屋、3階に美容室があることは、実際に訪れて初めて分かる情報でもあります。外の看板やSNSで「1つの建物で3つの過ごし方ができる」ことを来店前から伝える工夫があれば、来店目的を1つに限定せず、より多くの人に建物全体を知ってもらえそうです。
中学時代の同級生3人が異なる専門性を持ち寄って共同創業したという経緯は、単なる複合店以上の人間的な魅力を持つストーリーです。この経緯を店内やSNSでより積極的に発信することで、単なる「便利な複合店」ではなく「応援したくなる地元のお店」として認知される可能性が広がりそうです。
原材料費、人件費、賃借コストが上昇するなか、複数業態が1つの建物をシェアする運営形態においても、事業計画の整備や販路開拓、省力化への投資は有効な選択肢です。以下はSTAY FRESHが現在必要としている、または各制度を利用できると判断したものではありません。同様の複合型店舗運営が今後の展開を検討する際の一般的な選択肢です。
複数事業者が1つの拠点を共同運営する形態は、共同事業や地域連携型の創業支援施策の対象になる場合があります。公募要件と自社の状況を確認する価値があります。
複合店であることを伝えるサイネージやSNS運用の強化、予約システムの導入などは、事業計画と公募要件に合えば、小規模事業者持続化補助金等の検討対象になる場合があります。
屋上テラスの快適性を高める空調・遮熱設備や、各フロアの回遊性を高める内装投資は、必要に応じて省力化・設備投資系の補助金の検討対象になり得ます。
補助金は、採択や交付決定が約束されるものではなく、申請前に契約・発注・支払いをすると対象外になる制度もあります。まず事業の課題と必要な投資を整理し、その後に対象制度、公募期間、補助対象経費を確認する順番が重要です。
2026年7月時点では、小規模事業者の販路開拓等を支援する小規模事業者持続化補助金、複数事業者の連携を支援する地域産業関連の補助金、ITツールの導入費用の一部を支援するデジタル化・AI導入補助金2026などがあります。募集期間、予算残額、対象経費などは変わるため、必ず申請時点の公式情報を確認する必要があります。
STAY FRESH Coffee&Foodsの面白さは、コーヒーやスコーンといった商品そのものだけではありません。中学時代の同級生3人が、それぞれの専門性を持ち寄って1つの建物をシェアするという、単独出店にはない複合戦略にこの店の独自性が詰まっています。前身店を単独業態のまま引き継ぐ「Kayagi」や「cafe works」とは異なり、STAY FRESHは複数の業態を水平方向に並べることで、1つの目的では終わらない回遊型の店づくりを実現しています。
大倉山は、持ち家比率・一戸建て比率が高く、高所得世帯も厚く集積する、定住傾向の強い住宅地商圏です。地元での複数の用事を一度に済ませたいという住民ニーズと、STAY FRESHの「1つの建物で複数の過ごし方ができる」という設計は、非常に相性が良いと考えられます。
正直なところ、私自身はまだこのお店を訪れたことがありません。ぜひ近いうちにエルム通り商店街の白いビルへ足を運び、屋上テラスから見渡す大倉山の景色を実際に味わってみたいと思っています。そして、もし取材の機会をいただけましたら、中学時代の同級生3人での共同創業に至った経緯や、複合店を運営する上での工夫、そして今後の展望について直接お伺いし、改めて記事としてお届けできればと思っております。
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