📈 商圏レポート公開エリア数:504エリア!(7/26時点)続々追加中。 記事一覧を見る

武蔵小杉から徒歩5〜7分、「レストランμ」跡地に入った理由。ベーカリーカフェ「Voyage Side mogu」を立地から分析

  • URLをコピーしました!

街の店舗分析|ベーカリーカフェ編・物件変遷編

武蔵小杉から徒歩5〜7分、「レストランμ」跡地に入った理由。
ベーカリーカフェ「Voyage Side mogu」を立地から分析

川崎市中原区今井南町、二ヶ領用水とサライ通り商店街が交差する角地。人気シェフ・五十嵐美幸氏プロデュースの一軒家中華レストラン「μ(ミュー)」が営業していた2階建ての木造建物に、2026年3月、東京・吾妻橋から移転してきたベーカリーカフェ「Voyage Side mogu(ボヤージュサイド モグ)」がオープンしました。武蔵小杉駅の賑わいからは少し離れた「川沿いの寄り道スポット」というこの立地選択には、どのような意図があるのか。公開情報と武蔵小杉駅の商圏データから、店舗立地研究所が独自に分析します。

武蔵小杉駅から徒歩5〜7分
2026年3月プレオープン
「レストランμ」跡地
東京・吾妻橋からの移転
公開情報による独自分析
「街の店舗分析」とは

店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なるグルメ紹介や店舗の格付けではなく、実在するお店を通じて、「なぜこの場所で、この業態が支持されるのか」を考えます。

公開情報をもとにした分析では、確認できた事実と店舗立地研究所による考察・提案を区別して掲載します。店舗への取材が実現した場合は、オーナーの声や現地で確認した情報を加えた「リアル店舗レポート」として、さらに詳しくご紹介します。今回は、駅から徒歩10分の住宅街を選んだ「純珈琲」に続き、同じ武蔵小杉エリアで「川沿いの寄り道スポット」という異なる立地条件、かつ「有名店の跡地を引き継ぐ」という物件変遷のドラマ性を持つ「Voyage Side mogu」を取り上げます。

先に結論:Voyage Side moguは、「有名店の跡地」という看板の重さを、「子育て世帯の日常」という真逆のコンセプトで塗り替えた店だと考えられます。

五十嵐美幸氏プロデュースという名前の力を持つ物件を引き継ぎながら、「未来を担う子どもたちのために」という保存料を使わない手作りパンのコンセプトを前面に出し、キッズコーナーや「パン教室」企画まで用意する。前身のブランド力に頼るのではなく、まったく異なる客層・利用シーンを設計し直したことに、この店の面白さがあります。武蔵小杉の「1人世帯が過半数」という商圏の中で、あえて子育てファミリー向けの居場所を作るという選択は、競合の少なさを味方につける戦略として理解できます。

Voyage Side moguはどんなお店?

Voyage Side mogu(ボヤージュサイド モグ)は、神奈川県川崎市中原区今井南町1-16に位置するベーカリーカフェです。東急東横線・武蔵小杉駅東急南口3番出口から徒歩5〜7分(食べログでは620m、徒歩8分程度と案内)、二ヶ領用水とサライ通り商店街が交差する角地にあります。地域メディアの取材記事によれば、この立地には以前、人気シェフ・五十嵐美幸氏がプロデュースした一軒家中華レストラン「μ(ミュー)」が営業していた2階建ての木造建物があり、moguはその跡地を活かしてオープンしたとされています。2026年3月6日にプレオープンし、同月中旬にグランドオープンを予定していました。

運営するのは、東京・吾妻橋で「Voyage Side」というベーカリーを2店舗運営してきた藤﨑賢太郎氏です。取材記事によれば、吾妻橋店では2025年12月31日をもって営業を終了し、店舗名を「mogu」として武蔵小杉へ移転オープンする形になったとされています。「Voyage Side」には「寄り道」という意味が込められており、二ヶ領用水沿いを散歩するついでにふらっと立ち寄れる店を目指しているといいます。「mogu」というブランド名には「『未来を担う子供達のために』という願いから安心・安全なパンを目指し、パンに保存料は使わず、店舗で粉から成形して焼きたてを提供している。それを『子どもたちにもぐもぐしてほしい』ということで名付けた」という店主の説明が紹介されています。名物の「mogu食パン」は北海道産小麦粉・牛乳・バターのみを使用し、加水率110%という高加水パンの生地を使ったハンバーガーバンズ「moguAir」も看板商品の一つです。

店内には、前身のレストランμ同様、ゆとりのある客席が引き継がれており、半個室のようなスペースもあることから、家族連れでも安心して利用しやすい造りになっているとされています。子どもたちがパンを作る様子をこっそり見られる「mogu工房の窓」が設けられ、店舗2階のスペースを活用した「パン教室」の開催も企画されているとのことです。プレオープン時のメニューはハンバーガー、ホットドッグ、フレンチトースト、キッズプレート(580円)などで、グランドオープン後にカフェメニューが拡充される予定とされていました。公式サイトの案内では、キッズコーナーの設置や「もぐもぐタイム」というファミリー利用を意識した表現が繰り返し使われており、子育て世帯を主要な顧客層として明確に想定していることがうかがえます。

店舗名
Voyage Side mogu(ボヤージュサイド モグ)
所在地
神奈川県川崎市中原区今井南町1-16
アクセス
東急東横線・武蔵小杉駅東急南口3番出口から徒歩5〜7分(食べログ表記では駅から620m)。二ヶ領用水とサライ通り商店街の交差点角地
開業
2026年3月6日プレオープン/同月中旬グランドオープン予定
前身物件
五十嵐美幸氏プロデュースの一軒家中華レストラン「μ(ミュー)」(2階建て木造建物)
運営元
東京・吾妻橋で「Voyage Side」を2店舗運営していた藤﨑賢太郎氏。吾妻橋店は2025年12月31日に営業終了し、武蔵小杉へ移転
営業時間
公式サイトでは9:00〜18:00と案内。食べログでは火〜日9:00〜18:00・月曜定休(プレオープン中は10:00〜18:00・不定休、パン売り切れ次第終了の場合ありと案内。グランドオープン後の最新情報は公式Instagramで要確認)
座席・設備
26席、個室なし(半個室状の広いスペースあり)、貸切不可、駐車場なし、キッズコーナー・「mogu工房の窓」あり、2階でパン教室を企画
主な商品
「mogu食パン」(北海道産小麦粉・牛乳・バターのみ使用、保存料不使用)、moguバーガー(高加水パン「moguAir」使用)、ホットドッグ、フレンチトースト、キッズプレート、惣菜パン・サンドイッチ・スイーツ系のパン各種
決済方法
カード可、電子マネー可、QRコード決済可(食べログ情報)
公式情報
公式サイト「Voyage Side mogu」公式Instagram「@voyageside_mogu」
店舗立地研究所が「うまい」と感じた3つのポイント
1.有名店の看板を、あえて引き継がない勇気

五十嵐美幸氏という強いブランド力を持つ前身物件を、そのイメージのまま利用するのではなく、「子育て世帯のためのベーカリーカフェ」という全く異なるコンセプトで塗り替えたことは、前身の顧客層に依存しない新しい商圏開拓の意思表示と言えます。

2.「川沿いの寄り道」という立地の再定義

駅から少し離れた二ヶ領用水沿いという立地を、デメリットではなく「散歩ついでに立ち寄る」というブランドコンセプト(Voyage Side=寄り道)そのものに転換している点は、立地の弱みを店名・世界観で補う優れた設計です。

3.「食べる」だけでなく「作る過程」を見せる体験設計

「mogu工房の窓」やパン教室の企画は、単なる物販・飲食の場を、子どもの食育・体験の場に広げる工夫です。前身レストランのゆとりある客席や半個室スペースを、ファミリー利用の安心感にそのまま転用している点も合理的です。

立地分析:武蔵小杉は「1人世帯過半数」の中に子育て層が同居する商圏

店舗立地研究所が整理した武蔵小杉駅半径1km圏のデータでは、夜間人口67,529人、昼間人口68,522人、昼夜比1.015、来街倍率約1.15という「定住・高所得型」の商圏特性が確認できます。世帯構成を見ると1人世帯が52.1%(20,901世帯)と過半数を占めますが、3〜4人世帯も合計23.7%(9,479世帯)存在し、15歳未満人口比率も13.4%と全国平均を上回っています。年収700万円以上世帯は39.4%、年収1,000万円以上世帯は20.6%に達し、タワーマンションを中心とした高所得の共働き・子育て世帯が一定の厚みを持って居住していることがうかがえます。

この商圏構造を踏まえると、Voyage Side moguが「子育て世帯向けのベーカリーカフェ」という明確なコンセプトを掲げたことには、合理的な裏付けがあるように見えます。武蔵小杉駅周辺には大型商業施設(グランツリー武蔵小杉、東急スクエア、ららテラス武蔵小杉)の飲食店が486店舗集積しており、単身層・ファミリー層いずれの需要も強い競合環境にあります。その中で、駅前の商業施設群とは異なる「二ヶ領用水沿いの一軒家」という立地は、駅前の喧騒を避けたい子育て世帯にとって、むしろ「ゆっくり過ごせる場所」という差別化要因になり得ます。半個室のような広い客席、キッズコーナー、パン教室企画といった設備・企画は、いずれも15歳未満人口比率13.4%というこの商圏の子育てニーズに合致した設計と考えられます。

武蔵小杉駅1km圏の指標 公開値 Voyage Side moguへの読み替え
3〜4人世帯比率 合計23.7%(9,479世帯) 半個室スペース・キッズコーナーを備えたファミリー利用の受け皿になりやすい。
15歳未満人口比率 13.4%(全国平均を上回る) 「mogu工房の窓」やパン教室企画など、子ども向け体験を軸にした差別化が可能。
高所得世帯比率 39.4%(年収700万円以上) 保存料不使用・素材にこだわった単価の高いパン・バーガーにも購買力が見込める。
来街倍率・昼夜比 約1.15倍/1.015(定住型商圏) 地元での消費が完結しやすく、駅前を外した立地でも地元客の口コミで支持されやすい。
飲食店数 486店舗(大型施設含む) 駅前の激しい競合を避け、二ヶ領用水沿いという独自の立地文脈で差別化できる。

※駅別数値は国勢調査、経済センサス等を基礎として店舗立地研究所が整理した半径1km圏の公開値です。統計項目により基準年が異なり、店舗の実際の来店客数や売上を示すものではありません。

さらに広がりそうな3つの顧客層

ここからは、店舗の現在の顧客構成や実施状況を確認したものではなく、公開情報と商圏特性から考えられる今後の可能性です。すでに実施されている取組が含まれる可能性があります。

1.二ヶ領用水の散歩ルート利用者の「寄り道」需要

ブランド名「Voyage Side(寄り道)」が示すとおり、二ヶ領用水沿いを散歩するファミリー・カップル・ペット連れなど、目的地ではなく通りすがりに立ち寄る需要を、テイクアウトメニューの充実でさらに取り込める余地がありそうです。

2.パン教室を軸にした地域コミュニティ形成

企画中とされる2階の「パン教室」が定着すれば、単発の来店客を、教室の常連という継続的な関係に変えられる可能性があります。子育て世帯同士のつながりが生まれる場として機能する余地もありそうです。

3.前身「レストランμ」を知る層への再訪動機づけ

前身の中華レストランを利用していた層に対して、「あの建物が今はこうなっている」という物件の物語を発信することで、懐かしさをきっかけにした新規来店を促せる可能性があります。

もっと認知を広げるなら考えられること
グランドオープン後のメニュー・営業日情報の一元化

プレオープン時点では営業時間・定休日が「不定休」とされ、食べログと公式サイトの間でも表記の粒度に差があります。グランドオープン後の正式な営業体制が固まった段階で、主要な情報源での表記を統一することが、初めて訪れる顧客の迷いを減らすことにつながりそうです。

「跡地の物語」を活かしたストーリー発信の継続

有名シェフの跡地に移転してきたという経緯は、それ自体が話題性の高いストーリーです。前身との対比(中華の一軒家レストラン→子育て世帯向けベーカリーカフェ)を発信し続けることは、地域メディアへの掲載機会を増やし、認知拡大に役立つ可能性があります。

店舗経営の視点:移転・複合機能化フェーズで検討余地のあるもの

原材料費、人件費、賃借コストが上昇するなか、他エリアからの移転や、カフェ・パン教室といった複合機能を持つ店舗にとって、設備投資や販路開拓の強化は有効な選択肢です。以下はVoyage Side moguが現在必要としている、または各制度を利用できると判断したものではありません。同様の移転・複合業態への展開を検討する店舗にとっての一般的な選択肢です。

製パン設備・厨房機器の投資

粉から成形・焼成までを店舗で行う体制の拡充や、2階のパン教室スペース整備にかかる設備投資は、日本政策金融公庫等の創業・移転支援融資の要件を確認する価値があります。

子育て層向け販促・情報発信の強化

キッズコーナーやパン教室といった子育て世帯向けの取組を広く知ってもらうための広告・SNS運用強化は、小規模事業者持続化補助金等の検討対象になり得ます。

EC・テイクアウト機能の拡充

散歩ついでの「寄り道」需要を取り込むテイクアウト専用メニューの開発や、パンの予約システム導入は、デジタル化・AI導入補助金等を検討できる場合があります。

補助金は「使えるものを探す」より、必要な投資から逆算する

補助金は、採択や交付決定が約束されるものではなく、申請前に契約・発注・支払いをすると対象外になる制度もあります。まず事業の課題と必要な投資を整理し、その後に対象制度、公募期間、補助対象経費を確認する順番が重要です。2026年7月時点では、小規模事業者の販路開拓等を支援する小規模事業者持続化補助金、ITツールの導入費用の一部を支援するデジタル化・AI導入補助金2026などがあります。募集期間、予算残額、対象経費などは変わるため、必ず申請時点の公式情報を確認する必要があります。

【街の店舗分析まとめ】”有名店の跡地”を、子育て世帯の日常に変えた店

Voyage Side moguの面白さは、保存料を使わない手作りパンの美味しさそのものだけではありません。人気シェフがプロデュースした一軒家中華レストランという強い前身ブランドを引き継ぎながら、そのイメージに頼らず、「未来を担う子どもたちのために」というまったく異なるコンセプトで場所の意味を塗り替えたことに、この店の独自性があります。武蔵小杉商圏は1人世帯が過半数を占める一方、3〜4人世帯も一定の厚みを持って存在しており、駅前の商業施設が単身層・高所得層をターゲットにする中で、二ヶ領用水沿いの一軒家という立地を選び、子育てファミリー向けの居場所として設計したことは、競合の少ない客層を的確に捉えた戦略だったのではないでしょうか。前身の物語性と、新しいコンセプトの明確さを併せ持つこの店が、今後「川沿いの寄り道スポット」として地域に定着していく可能性は十分にあるのではないでしょうか。

地域のお店を、商圏データと一緒に紹介します

店舗立地研究所では、飲食店、物販店、美容サロン、整体・リラクゼーション、パーソナルジムなど、地域で営業する店舗の魅力を、立地・商圏・顧客層の視点から紹介しています。

掲載・取材をご希望の店舗様は、公式LINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。店舗の出店・移転・商圏分析、事業計画、資金調達、補助金活用、集客、省力化のご相談についても対応しております。

公式LINEで相談する
お問い合わせはこちら

関連記事
出典・確認資料

執筆・分析:太田 満/編集:店舗立地研究所編集部

本記事は店舗の優劣や経営状態を格付けするものではありません。公開情報と商圏データを用いて、地域店舗の魅力と立地・店舗経営上の可能性を独自に考察したものです。売上、利益、実際の顧客構成等を推定・保証するものではありません。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

太田 満のアバター 太田 満 店舗立地研究所及び合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ代表

合同会社ビジネスデザインラボラトリーズ 代表社員
店舗立地研究所 代表

株式会社みずほ銀行にて16年間、数百社の中小企業オーナー・個人事業主の渉外・融資審査・経営相談業務に従事。
2021年独立後は創業支援・店舗出店支援を多数手がける現役コンサルティング会社代表。

専門は店舗事業の商圏(エリア)分析。2,000以上のエリア分析を実施し、「負けない店舗経営」「失敗しないフランチャイズ選び」を支援中。

資格:中小企業診断士・宅地建物取引士・フランチャイズオーガナイザーのほか、賃貸不動産経営管理士・管理業務主任者・不動産証券化マスター・M&Aシニアエキスパートなどの資格も保有。

第19回(2026年4月30日締切)小規模事業者持続化補助金の申請者に対して、KLA(KDDI Location Analyzer)を用いた自社商圏分析サポートを実施。

その他、税理士事務所様などと共催の補助金セミナーなども行っており、店舗立地や補助金などのセミナー依頼も、公式LINEからお気軽にお問い合わせくださいませ。

コメント

コメントする