大倉山駅徒歩3分、宮大工造りの古民家で三代続く海鮮居酒屋。コロナ禍から生まれた「昼カフェ・夜居酒屋」の二毛作経営「男魚魚(おっとっと)」を業態モデルから分析
神奈川県横浜市港北区大倉山。東急東横線「大倉山」駅から徒歩3分、宮大工造りの温かみある空間で40年以上にわたり地域に親しまれてきた海鮮居酒屋「飲み喰い道楽 男魚魚(のみくいどうらく おっとっと)」があります。実はこの場所、男魚魚として開業する以前は、現店長・川井駿吾氏の祖父母と両親の4人が「食堂兼喫茶店」を営んでいた、家族三代にわたる飲食業の系譜でした。そしてコロナ禍の緊急事態宣言をきっかけに、夜は居酒屋、昼はカフェ「OTTOTTO COFFEE」として営業する、いわば原点回帰ともいえる二毛作経営が生まれます。南房総から直送される天然鮮魚と、元住吉の人気コーヒー店から仕入れる本格コーヒーが同じ屋根の下で両立するこの店を、店舗立地研究所が家業継承と業態多角化の視点から分析します。
三代にわたる飲食業の系譜
宮大工造りの古民家空間
コロナ禍生まれの二毛作経営
南房総産地直送の天然鮮魚
店舗立地研究所が、地域で気になるお店を独自に取り上げ、その店舗ならではの魅力や工夫を深掘りするとともに、商圏特性、店舗立地、顧客層、利用動機などの観点から分析するシリーズです。単なる店舗紹介や格付けではなく、実在するお店を通じて、「なぜこの場所で、このお店が支持されるのか」を考えます。
公開情報をもとにした分析では、確認できた事実と店舗立地研究所による考察・提案を区別して掲載します。店舗への取材が実現した場合は、オーナーの声や現地で確認した情報を加えた「リアル店舗レポート」として、さらに詳しくご紹介します。
先に結論:「男魚魚」という店の面白さは、老舗居酒屋というだけでは終わりません。この物件はもともと店主一家が「食堂兼喫茶店」を営んでいた場所であり、コロナ禍で夜営業ができなくなったことをきっかけに生まれた昼の「カフェ」営業は、実は家業の原点への回帰でもあったという二重構造にあります。南房総の契約漁港から市場を通さず直接仕入れる天然鮮魚と、元住吉の人気コーヒー専門店から仕入れる本格コーヒーという、一見結びつかない2つの「こだわり」が同じ宮大工造りの空間の中で共存していること、そして地元の飲食店主から受け継いだレシピでスパイスカレーを作るという、大倉山という街のつながりの厚みも、この店を理解する上で欠かせない視点です。
「飲み喰い道楽 男魚魚(おっとっと)」は、神奈川県横浜市港北区大倉山1-18-26に構える海鮮居酒屋です。東急東横線・大倉山駅から徒歩3分、駅を出て左に直進し、オリジン弁当を右折して突き当たりまで進んだ右手という、駅前商店街から一本入った静かな通りに位置しています。宮大工の手による古民家風の店内は、柱やテーブル、調度品までレトロな雰囲気で統一されており、常時JAZZが流れる落ち着いた空間です。公式Instagram(@ottotto1984_ookurayama)のプロフィール欄には「南房総天然鮮魚と日本酒とコーヒー」「創業1983年」と記載されていますが、興味深いことに公式サイトのドメイン名(ottotto1984.jp)やInstagramのユーザー名には「1984」の数字が使われています。地域グルメメディアoishii-ouchi.comが2023年に「今年で創業40年になる」と報じている記事から逆算すると1983年創業となり、屋号のハンドルネームと公式プロフィールとの間に、開業年に関する1年ほどの小さな表記のズレが存在していることも、老舗ならではの面白い発見です。
この店の最大の特徴は、夜と昼で異なる顔を持つ「二毛作」営業にあります。夜は南房総・館山の契約漁港から市場を通さず直接仕入れる天然鮮魚を主役にした海鮮居酒屋「男魚魚」として、刺身の盛り合わせや、開業当時から提供されているすり身に餡をかけた名物「道楽まんじゅう」、骨やあらと昆布だけで出汁をとる「1日10食限定」のあら汁などを提供します。一方の昼は、ハンドドリップの本格コーヒーと自家製スイーツ、そして週末限定のスパイスカレーを楽しめる古民家カフェ「OTTOTTO COFFEE」(Instagram:@ottotto_andcoffee)として営業しています。地域グルメブログの取材によれば、この宮大工造りの落ち着いた空間は地元客だけでなく、雰囲気を目当てに訪れる外国人観光客や、レトロな内装を好む若い女性客にも人気だといいます。
「お店も出来ては無くなりの繰り返しで気が付けば入れ替わっていることもしばしば……だけどこちらのお店はいつもこの場所で変わらず営業を続けてくれている。JAZZが流れ、宮大工造りの店内、落ち着く空間は地元民のオアシスとなっている。」
――Retty口コミより(大倉山在住・24年目の常連客の投稿)
- 店舗名
- 飲み喰い道楽 男魚魚(おっとっと)
- 所在地
- 神奈川県横浜市港北区大倉山1-18-26
- アクセス
- 東急東横線 大倉山駅 徒歩3分(駅前商店街から一本入った通り)
- 創業
- 1983〜1984年頃(男魚魚として)/それ以前は店主一家が「食堂兼喫茶店」として営業
- 現店長
- 川井駿吾氏(創業者の子息)
- 建物
- 宮大工造りの古民家風建築
- 営業形態
- 夜:海鮮居酒屋「男魚魚」/昼:古民家カフェ「OTTOTTO COFFEE」(二毛作営業)
- 営業時間
- 昼12:00〜15:00・夜17:00〜22:30前後(曜日・時期により変動あり、最新は公式Instagramで告知)
- 定休日
- 月・火(時期により水曜のみ休業とする体制も)
- 電話
- 045-543-6508
- 席数
- 25〜28席(カウンター5〜6席)※資料により差異あり
- 名物料理
- 道楽まんじゅう、南房総直送鮮魚の刺身・かま塩焼き・煮つけ、鮮魚のあら汁(1日10食限定)、週末限定スパイスカレー
- 公式サイト
- ottotto1984.jp
- SNS(居酒屋)
- Instagram @ottotto1984_ookurayama/Facebook「男魚魚」
- SNS(カフェ)
- Instagram @ottotto_andcoffee
飲食店取材メディアinshokuten.comの取材によれば、現店長・川井駿吾氏の両親が40年以上前に「男魚魚」を開業する以前、この場所では川井氏の祖父母と両親の4人が「食堂兼喫茶店」を営んでいました。つまり男魚魚は、実質三代にわたって続く家業の、いわば「二代目」の屋号にあたります。この長い系譜こそが、後述する昼カフェ営業を単なる思いつきではなく、原点への回帰として読み解ける根拠になっています。
コロナ禍の緊急事態宣言によって夜の居酒屋営業が制限された際、スタッフとのアイデア出しから「昼はカフェを営業しよう」という発想が生まれました。もともとカフェ勤務経験のあった川井氏が主導し、本格コーヒーとスイーツを揃えた「OTTOTTO COFFEE」として今も営業を続けています。危機対応から生まれた業態が、恒常的な収益の柱として定着した好例です。
コーヒー豆は元住吉の人気コーヒー専門店から仕入れ、スパイスカレーの下味は「かつて大倉山にあった、川井氏が敬愛する飲食店の店主」から教わったレシピを使っています。自前の技術だけに閉じず、地域の他店の知恵や技術を積極的に取り込んでいる姿勢が、この老舗店に新しい魅力を加えています。
男魂魚が立地する大倉山は、大倉山記念館を中心とした緑豊かな高台と、東急東横線沿線らしい閑静な住宅街が広がるエリアです。駅前の商店街(エルム通り)を中心に飲食店が集積していますが、食べログの店舗情報を見ると、駅前にあった「魚民 大倉山駅前店」が閉店済みとなっているなど、駅前一等地の海鮮居酒屋・大衆店は入れ替わりが決して少なくないことがうかがえます。実際にRettyの口コミでも「お店も出来ては無くなりの繰り返しで気が付けば入れ替わっていることもしばしば」という常連客の声が寄せられており、男魚魚のように場所を変えず40年以上営業を続けている店は、このエリアにおいてむしろ稀な存在だと言えます。
駅前商店街のメイン通りではなく、そこから一本入った静かな通りという立地も特徴的です。この場所は視認性の高い一等地ではありませんが、宮大工造りの古民家という物件自体の稀少性が「わざわざ訪れる価値」を生み出しており、駅前立地に依存しない集客を実現しています。これは、駅前の好立地をあえて選ばず住宅街の中で経営してきた「うつわ屋まほろ」のあり方とも通じる、駅前立地とは異なる価値の作り方の一例です。
| 比較軸 | 男魚魚(大倉山・海鮮居酒屋) | 綱島うち田(跡地継承・二毛作価格戦略) | うつわ屋まほろ(経歴軸・器店) |
|---|---|---|---|
| 継承の形 | 家族三代(食堂喫茶店→海鮮居酒屋) | 他人からの事業承継(前身業態は異なる飲食店) | 個人のデザイナーからの技術転身 |
| 複合営業の理由 | コロナ禍による夜営業制限への対応から定着 | ランチ・ディナーの価格帯を分ける経営戦略 | 該当なし(単一業態) |
| 信頼構築の軸 | 40年以上の営業実績と、地域店主から受け継いだ技術 | 目黒の人気店店主との専門学校時代の縁 | 10年以上・約200名の作家とのつながり |
| 仕入れ・素材の特徴 | 南房総産地直送の鮮魚、元住吉のコーヒー豆 | 専門店ならではの食材選定 | 作家との直接的なつながりによる仕入れ |
※「綱島うち田」「うつわ屋まほろ」は当研究所の別記事で分析した店舗であり、比較のための参考情報です。座席数・営業時間などの数値は資料により差異があり、店舗の実際の営業状況を保証するものではありません。
男魚魚という店の歴史を整理すると、単発の老舗居酒屋ではなく、一つの物件で業態を変えながら続いてきた家業の物語が見えてきます。第一の局面は、現店長・川井駿吾氏の祖父母と両親の4人が、この場所で「食堂兼喫茶店」を営んでいた時代です。食堂と喫茶店を兼業していたという事実そのものが、後の「居酒屋+カフェ」という二毛作の原型だったと見ることができます。
第二の局面が、1983〜1984年頃、川井氏の両親が「男魚魚」として海鮮居酒屋を開業したことです。南房総から直送される天然鮮魚を軸に、開業当時から提供されている名物「道楽まんじゅう」など、看板メニューを確立していきました。この時点で店は「食堂喫茶店」から「海鮮居酒屋」への業態転換を果たしたことになります。
第三の局面:コロナ禍が呼び戻した「昼カフェ」という原点
2020年、緊急事態宣言の発令により夜の居酒屋営業が困難になったことをきっかけに、店ではスタッフとのアイデア会議から「昼はカフェ営業をしよう」という発想が生まれました。もともとカフェで働いていた川井氏が中心となり、コーヒー豆を元住吉の人気コーヒー専門店(MUI/旧もとえ珈琲)から仕入れる本格的なハンドドリップコーヒーと、元パティシエが手がける自家製スイーツを揃えた「OTTOTTO COFFEE」を立ち上げます。危機対応として始まったこの営業形態は、祖父母の時代の「食堂兼喫茶店」への、意図せざる原点回帰だったと見ることもできます。
カレー誕生の裏側にも、大倉山という街のつながりが息づいています。飲食店取材メディアinshokuten.comの取材では、男魚魚のスパイスカレーの下味の付け方について「かつて大倉山にあった、川井さんが敬愛する飲食店の店主から教わった」という経緯が語られています。ハウスギャバンの業務用商品「ジャワフレーク」をベースにしながら、地域の先輩店主から受け継いだレシピをアレンジすることで、居酒屋のカフェメニューとは思えないクオリティのカレーが完成しました。こうした「よそから学び、自店に取り込む」姿勢は、南房総の漁港から鮮魚を直接仕入れる仕組みや、元住吉のコーヒー専門店との関係にも通じる、この店のネットワーク型の経営スタイルを象徴しています。
そして現在、川井駿吾氏が店長として店を継承し、母親と二人三脚で営業を続けています。2026年8月にも公式Instagramで営業日・営業時間の変更案内が発信されており、40年以上を経た今も現役で営業を続けていることが確認できます。地域の祭事(藍祭や六月祭など)への出店や、お節料理の受け渡しといった季節の取り組みも行われており、単なる飲食店を超えた地域コミュニティの一員としての活動もうかがえます。
ここからは、店舗の現在の顧客構成や実施状況を確認したものではなく、公開情報と業態の傾向、エリア特性から考えられる今後の可能性です。すでに実施されている取組が含まれる可能性があります。
現在、家族三代にわたる系譜や「昼カフェは原点回帰である」というストーリーは、外部の取材記事によって知られている部分が大きく、店側の公式SNSでの発信は限定的です。この物語を店側から積極的に語ることで、「魚を食べに行く店」以上の、街の記憶に触れる場所としての来店動機を作れる余地があると考えられます。
コーヒー豆の仕入れ先(元住吉のコーヒー専門店)や、カレーのレシピを教わった地元店主の存在は、地域の飲食店同士の技術継承を感じさせる面白い要素です。メニュー上でこうした「つながり」を明示することで、他店との差別化と、地域内での回遊(コーヒー店にも足を運んでもらうなど)を同時に作れる可能性があります。
お節料理の受け渡しなど、季節性のあるテイクアウト商品の取り組みが既に見られます。宮大工造りの空間や道楽まんじゅうといった看板要素を活かした季節限定の物販・お土産展開は、来店機会の少ない層への接点作りとして広げる余地があると考えられます。
危機対応から生まれた男魚魚の経営スタイルには、同様の複業化を検討する事業者にとって参考になる視点もあります。以下は男魚魚が現在必要としている、または各手法を採用していると確定したものではなく、同様の経営スタイルを検討する事業者にとっての一般的な検討点です。
居酒屋は通常、ランチタイムが「遊休時間」になりやすい業態です。男魚魚はこの時間帯を、まったく異なる客層(カフェ利用の女性客・外国人観光客など)を取り込むための独立したブランド「OTTOTTO COFFEE」として運用することで、一つの物件・一つの厨房から二重の収益機会を生み出しています。
コーヒーは専門店から豆を仕入れ、カレーは地域の先輩店主からレシピを学ぶという形で、自店にないノウハウを外部から取り込んでいます。すべてを自前で開発するのではなく、専門性の高い部分を地域の他店と補い合う関係性は、小規模店舗が業態を広げる際の現実的な選択肢の一つです。
「道楽まんじゅう」は開業当時から提供され続けている名物メニューです。業態や営業形態が変化しても、創業時からの看板メニューを維持し続けることは、店の連続性・信頼を示す重要な要素になっていると考えられます。
男魚魚を「大倉山にある老舗の海鮮居酒屋」という一言で紹介することは間違いではありませんが、それだけではこの店の面白さの半分も伝えられません。祖父母と両親が営んだ食堂兼喫茶店から数えて三代にわたる家業の系譜、コロナ禍という危機をきっかけに生まれ、結果的に家業の原点への回帰となった「昼カフェ・夜居酒屋」の二毛作経営、そして南房総の漁港や元住吉のコーヒー店、地域の先輩店主といった「街のつながり」を積極的に取り込むネットワーク型のこだわり。これらはすべて、単なる老舗の看板の上に成り立っているのではなく、家族の歴史と地域との関係性を積み重ねてきた結果として今の姿があります。宮大工造りの空間でJAZZを聴きながら南房総の魚を味わうひとときも、ハンドドリップコーヒーとカレーで過ごす昼下がりも、実は同じ一つの家業の物語の、異なる時間帯の顔なのです。
店舗立地研究所では、飲食店、物販店、美容サロン、パーソナルジムなど、地域で営業する店舗の魅力を、立地・商圏・顧客層の視点から紹介しています。
掲載・取材をご希望の店舗様は、公式LINEまたはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。店舗の出店・移転・商圏分析、事業計画、資金調達、補助金活用、集客、省力化のご相談についても対応しております。
- 男魚魚-おっとっと 公式Instagram(@ottotto1984_ookurayama)(プロフィール情報、創業年、営業日・営業時間の告知)
- OTTOTTO COFFEE 公式Instagram(@ottotto_andcoffee)(カフェ営業に関する情報)
- 飲み喰い道楽 男魚魚 公式サイト(ottotto1984.jp)(店舗概要、こだわり、電話番号・営業時間)
- 公式サイト|コンセプトページ(産地直送の素材、日本酒の取り揃え、宮大工造りの空間、JAZZについて)
- 公式サイト|メニューページ(南房総直送鮮魚メニュー、道楽まんじゅう、あら汁の詳細)
- 男魚魚 公式Facebookページ
- 飲み喰い道楽 男魚魚(おっとっと)|食べログ(営業時間、席数、口コミ)
- 食べログ|料理メニューページ(産地直送鮮魚の仕入れに関する記述)
- OTTOTTO COFFEE(オットット コーヒー)|食べログ
- 大倉山で愛され続ける古民家居酒屋「男魚魚」とカフェ「OTTOTTO COFFEE」(oishii-ouchi.com)(創業40年の記述、宮大工造り、外国人観光客・若い女性への人気)
- やっぱりカレーは無敵。業務用商品「ジャワフレーク」を使ったカレーメニュー開発(inshokuten.com)(現店長・川井駿吾氏の紹介、家業三代の系譜、コロナ禍によるカフェ営業開始の経緯、カレー誕生の裏話)
- 飲み喰い道楽 男魚魚(大倉山/居酒屋)|Retty(口コミ、おすすめ度、常連客のレビュー)
- MUI(【旧店名】もとえ珈琲)|食べログ(男魚魚のコーヒー豆仕入れ先に関する参考情報)
- 【閉店】魚民 大倉山駅前店|食べログ(大倉山駅前の海鮮居酒屋の入れ替わりに関する参考情報)


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